もったいない連敗だ。ルーキー桐敷拓馬が好投しながら負け投手になった。前日は初先発だった小川一平が5回まで無失点で踏ん張ったが、やはり黒星がついている。2試合とも打線の援護なく、相手ペースのまま試合が進んでしまった。

日刊スポーツ評論家陣の1人に権藤博がいる。現在83歳。当然、若い人は現役時代を知らないだろうし、50代が終わりつつあるこちらも投げているところをナマで見た記憶はない。それでも有名な「権藤、権藤、雨、権藤」というフレーズは知っている。

ルーキーイヤーだった61年(昭36)に35勝19敗の成績を収めた。69試合に登板、イニング数は429回1/3だ。200イニング投げれば一流という現在から考えれば信じられない。とにかく試合中止以外は投げまくる様子から「権藤、権藤、雨、権藤」-だ。

98年に監督として横浜(現DeNA)を日本一にさせたのはもちろん、近鉄、中日、あるいは侍ジャパンの投手コーチなどを務めたのも知られるところ。その権藤から数年前、こんな話を聞いた。

「投手起用は欲張ってはいけない。特に若い投手を投げさせたときは5回を抑えたら、それでよしとしてスカッと代えてやる。変な色気を出すのはよくない」。現役時代、投げまくった反動もあってか、指導者になってからは選手側に立った起用法をしてきた権藤ならではの理論だろう。

いろいろな考えはあるが、この2試合、その話を思い出していた。前日の小川は6回につかまったし、この日の桐敷も同様だ。2回にソロを浴びていたとはいえ、それ以外は合格点の投球だった。

開幕戦のように打線がつながって援護できていれば、また違ったかもしれないが自軍無得点のプレッシャーを感じながら投げている状況ではかなり厳しい。好調な間に代えてあげられれば-。“過保護”かもと思うけれど、そんな考えもよぎった。

今季は延長12回制に戻っている。アルカンタラらが離脱し、若い阪神ブルペン陣ということもあって先発投手を粘らせたいベンチの考えもあるだろう。それも理解できる。

だが打線はもちろんだが継投も攻めていくものだろう。延長戦を気にして、勝てなければ本末転倒だ。西勇輝ら経験のある投手が先発する次カードで流れを変えてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)