「勝利の女神」はイタズラ好きか。9回、大山悠輔の右飛なんて、もう。中村健人が回転、転倒しながらバックハンドキャッチしたが、あれは普通、捕れないだろう。新人とはいえ「これぞプロ」のプレーだが、なんだか人知を超えた力が働いているように思えてしまった。そう思えば延長10回に「サヨナラ負け」と覚悟した瞬間、中村奨成が三塁を回ってコケるとは。

最後は戻ってきた岩崎優がなんとか無失点に抑え、今季2度目の引き分けに終わった。いずれも広島戦でその結果、阪神は11試合を戦って9敗2分けと、相変わらずの未勝利が続く。

カモにされているチームがあれば意気も上がらない。前監督・金本知憲の時代は広島が3連覇するなど強かったし、金本は「ここに来ると見えない圧がかかる」と嘆いていた。指揮官・矢野燿大に代わってからそんな苦手意識は払拭(ふっしょく)していたはずだが、4年目に一気に噴出している感じではある。

それでも阪神にとっては息を吹き返した6月のはずだ。ここに来てムードは怪しくなっているが、戦績はここまで11勝5敗1分け。今月の残りは6試合なのであと1勝すれば、とりあえず「月間勝ち越し」が決まる状況なのだ。

それがどないしたんやといえばそれまでだが、開幕からボロボロだった今季、月間勝ち越しできれば初めてのこと。「負け」ばかりが目立つシーズンで、ようやく「勝ち越し」の文字が躍るのは雰囲気の上だけでも悪くないと思っている。

その6試合は甲子園で中日、そして敵地・横浜スタジアムでDeNAといずれも下位との対戦だ。だからといって勝てるものでもないけれど来月、ヤクルト、巨人、そして大の苦手になってしまった広島と次に戦うまでに、チーム状況を上向かせておく必要がある。

そのためにも重要な6月残り6試合だ。しかし24日の中日先発は難敵・大野雄大である。しかし、こちらもエース青柳晃洋だ。ここで何とか連敗を止めたい。5連勝の後、3連敗でやっと1分け。上昇ムードは湿りがちだけど終わったことは取り返せない。

1つ“験担ぎ”を書いておけば、24日の阪神-中日戦をABCラジオで実況予定のベテランアナウンサーの伊藤史隆は、今季ここまでラジオで実況した5試合は無敗だそう。何でも前向きにとらえ「甲子園で出直し」ということにしたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

広島対阪神 9回表阪神2死二塁、近本は右前に同点適時打を放つ(撮影・加藤孝規)
広島対阪神 9回表阪神2死二塁、近本は右前に同点適時打を放つ(撮影・加藤孝規)