阪神は流れが悪いし、ツキにも見放されている。2点を追う展開になった1回。先頭の島田海吏が右前打で無死一塁。ここで2番に入っていた糸原健斗は強攻策だったが遊飛に倒れ、反撃ムードがしぼんだ。

あそこは犠打では? という見方もあるだろうが糸原は大野雄大に強い。昨季まで31打数11安打、打率3割5分5厘と打っている。今季も14打数5安打の3割5分7厘。この日も4回、そして7回と2安打だ。

この日の阪神打線は4安打なので半分は糸原がマークしたことになる。1、3、5番が抜けている現状、糸原は打ってもらわないと困る存在だ。だからこそ2番はどうなのかとは思うが、いずれにせよ彼の安打が1回に出ていれば流れも変わっていたかもしれない。そういう意味でもツキがないと感じる。

糸原は1回に適時失策もした。痛いプレーだが、こういう失策は打者から近いサードの宿命として避けられないものでもある。それが大事なところでポロッと出てしまう。批判は仕方がないが糸原の守備が光った試合もあるし、やっぱり、なんとも流れが悪い。

最大「16」にまで膨らんでいた借金を完済し、上げ潮ムードだったのにコロナ禍で主力を欠き、様子が変わった。4連敗で再び借金生活に逆戻り。追いかけていたヤクルトが苦しんでいるのに、こちらも同様にあえぎ、あっという間に3位も危ない状況に陥った。

誰が見てもピンチである。脱出する要素も見えてこない。阪神最大の強みは投手陣だが得点しなければ勝てないのも当然。その得点が入らないのだ。0点負けは今季20度目か。それで、よくこの位置にいるな、という話でもある。

前日も触れたが、やはりもっと足を使える上位打線がいいと感じるし、ロドリゲスは下位にした方が機能するのではと思う。しかし、そんなことより何より、今は流れを変える1発が必要だ。期待できるのはやっぱり佐藤輝明だろう。2年目の選手に期待するのも酷だが、それも事実。「おめでたいのう」と言われても13日の中日戦で佐藤輝が打ち、藤浪晋太郎が抑えれば流れは変わるのだ。

「何もできなかったなという感じです」。指揮官・矢野燿大は元気なく話したというがそれではいけない。6回、西勇輝に代打を出さなかったのは消極的の極みだろう。まだ白旗を上げるときではないのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 7回裏阪神無死、糸原は右前打を放つ(撮影・宮崎幸一)
阪神対中日 7回裏阪神無死、糸原は右前打を放つ(撮影・宮崎幸一)
阪神対中日 1回裏阪神2死一塁、中飛に倒れた佐藤輝(撮影・前田充)
阪神対中日 1回裏阪神2死一塁、中飛に倒れた佐藤輝(撮影・前田充)