「13日の中日戦で佐藤輝明が打ち、藤浪晋太郎が抑えれば流れは変わる」-。淡い期待を込めて、前日にそう書いた。地元・関西出身、鳴り物入りのドラフト1位入団と共通項を持つ看板選手の2人が持てる力を発揮すれば…。そんな思いを持ってのことだ。
はたして藤浪は期待以上の好投を見せた。スクイズで1失点こそしたが7回を投げ、10奪三振も素晴らしいが何より四死球なしというのがいい。今季、勝ち星はないものの我慢している感じがよく分かる。
期待が外れのは佐藤輝だ。4番打者らしく、いずれも走者を置いた場面で打席が回ったが3打数無安打の1四球。この日も快音は出なかった。これで5日に大山悠輔がコロナ陽性で不在になってからは26打数2安打、打率は1割に満たない7分7厘という状況だ。
「大山おらんかったらあかんがな」という声も聞こえてきそうだが、もともと打線はそういうものだ。3番近本光司もいない。クリーンアップで唯一、残っているのは佐藤輝だけとあってはマークもきつくなるし、いよいよ打てなくなる。とはいえ、そこは4番なのだから打ってもらわなければ困るし、打ってこその“値打ち”なのだ。
打撃コーチ陣もきついだろう。北川博敏、新井良太、現在は巡回コーチの藤井康雄もいる。音なし打線をなんとかしたい…と指導は続いているが結果に結びつかない日々だ。
北川で思い出すのは言うまでもない近鉄時代の01年に放った「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打」である。あれは彼がオリックスの職員をしている頃だったか。「阪神にいても大注目の打者になっていたかもね」という話をしたことがある。北川は00年オフに阪神からトレードされていた。
そのとき北川が言ったのはこんなことだ。「いやあ。阪神のあの環境ではとても無理でしたね。ボクは」。つまり一挙手一投足が虎党やメディアから注目される状況ではメンタル面からも活躍できなかったということだ。
佐藤輝は大変だろうと想像する。おおらかな性格のようだし、プロ1年目からバンダナを巻いて“今風”だし、周囲の声にはあまり反応しないようにも見える。それでも結果が出ないのは苦しいはず。何より自分が情けないだろう。そんな自分を救うのはやはり自分しかいないのだ。なんとかはい上がれ、佐藤輝よ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)