選手にとって監督との関係はどういう感じだろう。会社員にとって上司のような感覚だろうか。ある球界の大物OBにそんな質問をしたことがある。内容的に名前は書きにくいけれど答えはこんな感じだった。

「居酒屋で酔っぱらった後、女のコを目当てに飲み屋さんに行くとするだろ? 気に入ったコがいればそのまま、その店にいる。いなかったら次の店に行く。そういう感じかな」

??? 野球選手と違ってハシゴ酒する財力もないし、女性に興味なしとは言わないが下戸だし。大物選手だから自分の方から監督を気に入る、入らないと言えるのか。正直、その例えがピンと来なかったのだが要するに「相性が大事」と言いたかったのかなと想像している。

監督と選手の間に「相性」はあると思う。俗っぽい言葉で「好ききらい」と言い換えてもいい。同じぐらいの実力レベルなら馬の合う方、好きなプレースタイルの選手を起用するだろう。「実力の世界」と言っても、そこに好みが出るのは否定できない。

阪神の次期監督がOBの岡田彰布に一本化されたという。候補には違いないと思っていたが同時に他の名前を有力視していた。背景にはいろいろとあるようだが、とりあえず、虎党にとって大事なのは勝つかどうか、面白いかどうかということだろう。

選手も落ち着かないはずだ。数カ月後にはチームの体制が変わる。何を言われるか分からんぞ。そんな気分の選手もいるかもしれない。そこで思うのは「そんなの関係あるか」というメンタルを持っていないとダメだということだ。

「相性」や「好ききらい」の話を書いたが、それは同じような実力レベルなら…という前提がある。他を圧倒する実力があれば動揺は必要ない。「オレを使わないはずがない」。そう思っていればいいからだ。

反対に言えば、そういうレベルに達するよう努力することが大事なのだ。中野拓夢の先頭打者弾が出たこの試合。「岡田効果」かどうかはともかく締まっていたように見えた。

新監督どうこうを気にする前に選手には残り2試合で存在感を示してほしい。その結果、CSに進出できればそれでいいし、新監督にしても「しっかりやらんといかん」とプレッシャーを感じるはず。お互いの、そういう緊張感が大事だと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)