ええやん。大山悠輔。打たんでええよ。独断と偏見? で申し訳ないが、そう思って試合を見ていた。先発野手7人が安打をマークする中、大山は無安打。9回に巡った最後の打席も申告敬遠され、この日は4打数無安打に終わった。

無安打で何がいいのか。それは大山が「4番」だからだ、と言いたい。今季ここまで4番を全うしている大山。その前に阪神でシーズンを通じて4番を打ったのは金本知憲だった。言うまでもない03年、05年の優勝に貢献した鉄人だ。

「ここって言う場面、みんながよくぞ打ってくれたっていうところで打つのが4番なんよ」。いろいろな言い回しはあったけれど金本の“主砲哲学”はそういうものだった。エース格相手に誰も打てない。1点を争う投手戦。そんなとき、痛烈な一撃を見舞うのが主砲ということだ。

「まあ大差をつけた試合で打たせたら新井サンは一流やけどな」。多くの場合、現在の広島監督・新井貴浩をイジる話につながるのだが、とにかく、金本の主砲理論は好ましかった。

失礼ながら「これが連覇したチームか」と思ってしまうようなヤクルト戦である。1回からミスの連続。近本光司の右翼への当たりをサンタナがそらして三塁打に。中野拓夢の四球で一、三塁にするとノイジーの三ゴロを村上宗隆が悪送球。労せずして先制すると大山悠輔が一邪飛で倒れた後、佐藤輝明が連日の1発だ。1回は2安打で4点を先制し、試合が決まった。

6回には森下翔太も本塁打を放ち、突然誕生した「アイブラック兄弟」がそろい踏み。投げては伊藤将司がもう少しで「マダックス」の好投で90球完投勝利だ。両軍の状況がこれ以上ないほど出た試合だろう。

そんなゲームで大山は沈黙した。だからいいと勝手に思うのだ。打者は打率、打点など個人成績があるので打てるときにいくらでも打ちたいもの。それでも試合に勝つという前提を考えれば序盤で大山の出番はなかったと言える。

「先制」「同点」「勝ち越し」「逆転」「サヨナラ」のいわゆる「殊勲安打」の数は、現在、大山が「18」でチームトップ。記録部に聞いた。重責を担いながら打つべきところでしっかり打っているのだ。近づいてきた優勝決定試合、さらにはポストシーズン、ここ一番での大山に期待したい。「真の4番打者」へ歩みは続く。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 森下(左)と談笑する阪神大山(撮影・藤尾明華)
ヤクルト対阪神 森下(左)と談笑する阪神大山(撮影・藤尾明華)