結論から言えば佐藤輝明の失策は痛かったが、それで負けた訳ではないと思う。敗因は初対戦のヤフーレを打てなかったことだ。その意味では佐藤輝にも責任はあるのだが、長いシーズン、そんなゲームもあるとしか言いようがない。チーム・バランスで見て、まだ3連勝できる調子ではないということだろう。

佐藤輝に始まり、佐藤輝に終わったようなヤクルト3連戦だった。2試合連続での決勝本塁打。だが最後は痛い3失点目の適時失策をやらかしてしまった。「決勝点」ではないもののチームにとってイヤな感じのするプレーだったことは否定できない。

8回2死二塁。ここで1回に先制2ランを放っていたオスナの打球は痛烈に三塁を襲った。ほぼ正面のように見えたがサード佐藤輝はこれにしっかり反応できない。腰高の体勢で打球を止めることができず、適時失策になった。

確かにグラブで捕球しにいこうとしてそらした形になってしまったのは印象がよくない。「飛んでくるぞ」という集中力がいまひとつだったようにも見えた。腰を落とし、体を張って止めにいけば、走者を生還させることはなかったかと思うが、これも結果論だ。

「三塁手で大事なのはエラーしても平然としていられることですね。サードは絶対にエラーしますから。それで精神的に影響されないことが大事なんです」

以前にも書いたが、これは現在、打撃コーチを務める今岡真訪が日刊スポーツ評論家時代に話していたことだ。内野でもっとも鋭い打球が飛ぶのがサード。左打者で一塁に強い打球が来る場合もあるがベースが近い。前に落とせば処理できる。だがサードは一塁から遠く、難しい。

サードを守るということは常に失策の不安がつきまとうということだ。どんな名手でもこれは同じ。だからこそ横っ跳びなどのいいプレーをすれば、より華やかなイメージが残る。大物選手の佐藤輝にはぴったりのポジションだろう。

ヘッドコーチ平田勝男は「捕らなあかんよ」と厳しかった。佐藤輝自身も「ちょっと見づらさもあったんですけど。練習します」。確かに失策していいはずはない。それでも指揮官・岡田彰布が言うように「エラーなんか出るよ」ということだ。避けたいが痛いミスもときには出る。大事なのはその経験を次にどうつなげていくかということだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 選手交代を告げるためベンチを出る阪神岡田監督(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 選手交代を告げるためベンチを出る阪神岡田監督(撮影・足立雅史)