神奈川の高校野球指導者が一堂に会する「第40回神奈川県高校野球監督会」が4日、横浜市の神奈川公会堂で行われた。

県内130人の高校野球指導者が集い、元横浜監督・渡辺元智氏の講演や、2020年から22年まで育成功労賞を受賞した3氏のお祝い、上位を目指す若手監督のスピーチなど、感染症対策をした上で交流し、9日に開幕する神奈川大会の健闘を誓い合った。


神奈川県監督会の歴史は古く、1980年にさかのぼる。当時、渡辺氏が中心となって富岡(現金沢総合)、武相、県商工、日大高5人の監督が食事会を行ったのが始まりだ。公立私学の枠を越えて神奈川高校野球の発展を目指そうというのが狙い。名コーチで知られる小倉清一郎氏(元横浜部長)の忖度(そんたく)ない優勝校予想や、「栄冠は君に輝く」の大合唱など、グラウンドでは見せない表情で親睦を深める。夏の大会直前にこのような会を催す県は珍しく、神奈川高校野球の強さのルーツにもなっていた。コロナ禍などの影響で2018年以来、4年ぶりの開催となった。


 横浜隼人・水谷哲也監督は「渡辺先生の講演は、神奈川高校野球のリスタートにふさわしい企画だったと思います。こういう交流はとても大切。開催が戻って何よりです」。今回が初参加となる東海大相模・原俊介監督は「(前任地の)静岡は地区での交流会はありましたが、全県での会は初めて。身が引き締まる思いですし、激戦区を戦う監督さんから多くのお話を聞かせていただきたい」。公立で今春4強入りした藤沢清流・榎本正樹監督は「渡辺先生のお話を聞いて、選手たちとどういうチームを作っていけばいいか、もう1度考える機会になりました。夏に向けてがんばりたい」と表情を引き締めた。


■「栄冠は輝く」3番の歌詞「健康」を祈念


2020年に監督会会長に就任した向上・平田隆康監督は、監督会の再開を心から願っていた。「再開するときは、渡辺先生にぜひお話をいただきたいと年明けから準備していました。今までのような食事をしながらの開催はできませんでしたが、若手監督がベテラン監督と顔を合わせる機会ができただけでもよかった。前任の寺尾洋一会長(元座間総合監督)からのバトンもつながった」と安ど。恒例の「栄冠は君に輝く」の合唱は音声を流すのみの“黙唱”となったが「3番の歌詞には『美しく匂える健康』のフレーズがある。最後まで『健康』な身体で選手たちと戦い抜ける大会にしたい」と大会の無事を祈念した。


会場には、同じ悩みや葛藤を抱えてコロナ禍を乗り越えてきた監督たちが、肩をたたいて励まし合う光景があった。あすからライバルとして戦い、終わればまた仲間に戻る。神奈川高校野球の魅力ある姿が、また1つ戻ってきた。【樫本ゆき】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「いま、会いにゆきます」)


育成功労賞受賞

2020年 金沢哲男氏(元横浜商科大高監督) 

2021年 武藤周二氏(元日大藤沢監督)

2022年 及川賢氏(元平塚学園部長)

壇上の渡辺氏に質問する、2020年育成功労賞受賞の元横浜商大高監督・金沢哲男氏
壇上の渡辺氏に質問する、2020年育成功労賞受賞の元横浜商大高監督・金沢哲男氏
育成功労賞受賞を受賞した、左から及川賢氏(平塚学園=22年)、武藤周二氏(日大藤沢=21年)、金沢哲男氏(横浜商科大高=20年) 
育成功労賞受賞を受賞した、左から及川賢氏(平塚学園=22年)、武藤周二氏(日大藤沢=21年)、金沢哲男氏(横浜商科大高=20年)