盛岡大付(岩手)が、秋田商との大会史上初の延長タイブレークを制した。9回表1死満塁から登板した右腕杉山晃基(3年)が2者連続奪三振。タイブレーク10回表無死一、二塁では、バント小飛球を好捕して併殺を取るなど、2度の火消しに成功。10回裏のサヨナラ勝ちを呼んだ。

 背番号10の杉山の意地がチームを救った。出番が訪れたのは、1-1で迎えた9回表1死満塁。少しのミスも許されない場面で「あわてないで落ち着いていた」と、この日2安打の7番会田をフォークで空振り三振。続く8番近野への3球目は自己最速の146キロをマーク。4球目のフォークで三振に打ち取り、切り抜けた。

 初めて経験するタイブレークでも強心臓は変わらない。10回表無死1死一、二塁。目の前に打ち上がった小飛球に「自然と反応した」と長い手を伸ばし、飛びつく。すぐさま一塁に送球し、併殺で一気に状況を2死二塁と楽にした。続く打者は三邪飛に打ち取る。2イニング連続の「大ピンチ」を無失点で切り抜け、勝利につなげた。

 「悔しさをぶつけました」と杉山。負けられない理由があった。先月23日の一関学院との県大会準決勝では4-4と同点の8回裏から登板。その回に一挙6点を奪われ負けた。翌日の3位決定戦では同じ右腕花森禎樹(3年)が3安打で公式戦初完封勝利。昨秋から背負う背番号1は、今大会から花森のものになっていた。気持ちをぶつけた好投を「良かったと思います」と笑顔で振り返った。

 昨秋までは最速140キロに満たなかったが、5キロ体重を増やしたことで球速も5キロ以上伸びた。1回2/3、13球の投球でもネット裏の巨人榑松スカウトを「フォークで腕を振れている。今まで見た中で一番いい」とうならせた。目標は150キロ到達と甲子園。今日5日の昨秋王者仙台育英(宮城)戦に向け「思い切りぶつかって夏につなげたい」と意気込んでいた。【高場泉穂】

 ◆杉山晃基(すぎやま・こうき)1997年(平9)6月25日、東京・葛飾区生まれ。梅田小3年から「東京北砂リトル」で野球を始める。立石中では「すみだポニー」に所属。盛岡大付では2年春からベンチ入り。180センチ、77キロ。右投げ右打ち。家族は両親、姉。血液型A。