柏崎市佐藤池野球場に波乱が起きた。最初に巻き起こしたのは柏崎だ。第2シードの新潟県央工に勝った。エース村山太一(3年)が10安打を浴びながらも1失点。121球の粘投で、強豪校から金星をもぎ取った。

 村山太が天に突き上げた両腕は、121球投げたとは感じられないほど力強かった。第2シードの新潟県央工に、10安打を浴びながらも1失点。大物食いを決めた瞬間、照りつける日差しより明るい笑顔をマウンドで見せた。「1点取られたけれど、そこから粘り強い投球ができた」。まさに粘投だった。

 課題にしてきたのは連投に耐えるだけのフィジカル強化。11日に行われた1回戦の正徳館戦(12-0の5回コールド)でも村山太は先発し、3回39球を投げて1安打無失点に抑えた。省エネ投法で初戦を終えていただけに、この日の試合は大きく右腕が振れていた。「連投が利かない」というテーマを春以降に克服していたからだった。

 春以降はタイヤ押し、走り込みで下半身強化に取り組んだ。土曜、日曜に組んだ練習試合では、必ず2日間連続登板した。「よく投げた。本当によく粘った」と村山太を褒めた勝海裕一監督(48)は「続けて投げなくてはいけないのがエース」。指導者の思いを、夏の大事なゲームでやってのけた。

 第2シードの新潟県央工とは不思議な縁がある。昨秋の2回戦で対戦し、1-3の敗退。今春は3回戦で顔を合わせ、2-6で負けていた。夏の組み合わせは1回戦に勝てば3度目の対戦が実現。勝海監督は「(組み合わせ抽せん会で)クジを引いて戻ったら、うれしそうな顔を、みんながしていた」と振り返る。リベンジの舞台が整い、大事な夏に三度目の正直で勝った。

 「3回目の対戦で相手を意識したけれど、自分を見失わずに投げた」という村山太はこう続けた。「次の試合は県央工の思いをしっかり背負って投げたい」。敗戦の悔しさを知っているエースは、対戦校の夢をパワーに変えて夏を乗り切る覚悟だ。「まだ、ひとつのヤマ場を越えただけ」と話したときにはもう、試合で見せた笑顔は消えていた。【涌井幹雄】