村上桜ケ丘が三条東に快勝し、16強入りを決めた。2-2で迎えた7回裏1死満塁の場面で、6番打者の石栗飛雄馬(ひゅうま=2年)が左中間へ勝ち越し2点二塁打を放った。名前の由来はマンガ「巨人の星」の主人公・星飛雄馬から。人気マンガ同様、ゲームの主人公の1人になった。

 石栗の気迫が打球に乗り移った。「走者を絶対にかえす」という思いを、バットに込めた。2-2で迎えた7回裏1死満塁のシーンだ。重圧のかかる場面で入ったのは左打席。「センターから左方向に強い打球を打つ」と、春から徹底して積んできた素直なスイングを大事で披露した。バットにはじかれたボールは狙い通りに左中間に飛ぶ。闘志を内面に充満させながらも冷静な打撃。名誉回復のための一打にもなった。

 「チャンスを2度、つぶしていた。今度こそ何とかしてやろうと(ボールに)食らいついた」と石栗は言う。1-0で迎えた1回裏2死二、三塁の場面は空振り三振。チームに流れを呼び込む追加点のチャンスを逃がした。1-1で迎えた3回裏二塁のシーンも中飛に倒れた。一身に背負い込んでいた責任を、鮮やかな勝ち越し打で果たした。個人的なテーマは「チームに貢献すること」だった。

 飛雄馬という名前はマンガ「巨人の星」のファンだった父一良さん(53)がつけてくれた。「この名前を重く感じて、野球をやめたくなったこともある」と石栗は言う。しかし、今は違う。「名前を誇りに思う。活躍もできた」と笑う。三条東戦の主人公の中に、間違いなく石栗も入っていた。

 今春は背番号「14」をつけた代打要員。今夏は1ケタの背番号「3」に抜てきされて、先発メンバーに加わった。松田忍監督(65)は「勝負強い打者になってくれたから、春の先発メンバーを押しのけて(先発に)入った。期待するところはある」と言う。勝ち越しの2点二塁打は、その期待に応える一撃になった。「高校生同士の試合だから、気持ちで負けないのが前提」と石栗は、4回戦以降も170センチの全身に気迫を充満させて臨む。【涌井幹雄】