100年ぶりの優勝を目指す“レジェンド校”が、69年ぶりの夏2勝を挙げた。第1回大会で優勝した京都二中の流れをくむ鳥羽(京都)が、津商(三重)を破り、準優勝した1946年以来の2勝で、16強進出を果たした。

 守るべきものを守り通した。第1回大会に優勝した京都二中の流れをくむレジェンド校の伝統の力はダテじゃない。負ければ100年前に始まった大会史上、初めて近畿勢が3回戦に進めないピンチだったが、鳥羽がその牙城を守った。山田知也監督(39)は「選手は1試合1試合たくましくなった。すごい」と表現した。

 続けてきたことを信じた。2番岩切は先制打を含む4打数4安打と大爆発した。京都大会は結果が出ず、7犠打でつなぐ役割を担ったが、甲子園2試合で8打数6安打の大活躍。「結果が出なくてもやることを変えずにやり続けてきた。甲子園の力だと思います」と胸を張った。

 3回、岩切の適時打を口火に5連打。一挙3得点で勝負を決めたが、それも伝統の力だった。5連打中の4本目で2点目をたたき出した5番梅谷主将は「打たれた球と違う球を次の打者に投げてくる配球の傾向が分かった。3番が直球、4番が変化球だったので、直球を狙った」と胸を張った。

 記録員を含め、試合中に相手投手の配球を分析。レギュラーでないメンバーの力も勝利の立役者になった。タレントのいない公立校だが、代々引き継がれてきた「配球表」も甲子園で生きた。チームのモットーは「組織力」と「徹底力」。ナイン全員がグラウンドで実践した。

 試合前、南副主将がミーティングで言った。「近畿勢は負けたけど、近畿の人たちが僕らを注目してくれる。期待に応えて勝とう!」。岩切も「負けた近畿チームの人たちの分まで頑張りたい」と意気込む。100年続いた伝統は守り通す。強い気持ちが勝利への原動力となった。

 第1回大会初戦から数えてチームとして夏甲子園10勝目。目指す100年ぶりの優勝へ、伝統を守る力を最後まで継続する。【浦田由紀夫】

 ◆近畿最後のトリデ 鳥羽が勝ち、近畿勢で唯一の16強入り。現行の49代表制となった78年以降、近畿2府4県から16強ゼロの大会はまだない。77年以前でも、50年(参加23校)に最初の抽選で2回戦16校に組み込まれ初戦敗退した新宮(和歌山)を16強に含めれば近畿勢ゼロは1度もなく、史上初の屈辱を免れた。