秋田商は「石川2世」成田翔(かける)投手(3年)が延長10回161球を投げ抜き、80年ぶりの8強進出を決めた。

 秋田商のエース成田翔が161球の完投で、チームを戦後初の8強に導いた。8回に重盗をきっかけに2点差を追いつかれても慌てない。「盗塁は想定内。動揺しなかった。1つ1つアウトを取れば勝利が近づくと思った」。9、10回と走者を出してもホームを踏ませなかった。

 龍谷(佐賀)との初戦(2回戦)では、16三振を奪って完投した。高崎健康福祉大高崎の打者が「当ててくる」と分析し、奪三振7と打たせて取る投球にモデルチェンジ。外角いっぱいへの速球を中心に、スライダーを織り交ぜた。10回9安打3失点の内容に太田直監督(36)は「調子が悪い中で勝利につなげた」とたたえた。

 県勢の不振を振り払った。史上初めて東北5県が初戦突破した2年前の夏、秋田商だけが涙をのんだ。昨夏も5県が初戦に勝って、秋田代表の角館が敗れた。「他の東北が勝っていて、自分だけ負けたくない」と成田翔。県勢の8強入りは95年の金足農以来20年ぶりでもあった。

 10年夏まで甲子園ワーストに並ぶ初戦13連敗して、県が11年に立ち上げた「高校野球強化プロジェクト」は、5年目の今夏を最後に役目を終える。堂林(広島)を擁して09年夏の甲子園を制した中京大中京(愛知)前監督の大藤敏行氏(53)らがアドバイザーとなり、定期的に選手に技術指導などを行ってきた。成田翔もその1人だ。

 ここまで3回戦が最高の「強化プロジェクト」の目標は「全国4強以上」。それに1歩近づき、成田翔は「このまま上に行きたい」と意気込んだ。今日17日、仙台育英との東北対決で創部初の夏4強をつかむ。【久野朗】

 ◆80年ぶり8強 秋田商の夏8強は35年以来80年ぶり。同一校の8強ブランクとしては、08年慶応の88年ぶりに次ぐ長さ。

 ◆秋田県勢の8強 95年金足農以来20年ぶり。全国47都道府県のうち8強が遠い長さでは鳥取県(56年米子東が最後)長野県(94年佐久が最後)に次いで3番目だった。