今夏限りの休部が決まっていたPL学園(大阪)が初戦で強豪・東大阪大柏原に敗れた。来春の部員募集を行わないことは決定的で、再開時期も不透明。最後は部員12人での戦いで区切りを迎えた。

 逆転のPL、KKコンビ…甲子園で春夏7度の優勝を誇るなど高校野球の歴史に大きな足跡を残した屈指の名門が演じた熱戦の数々をたどる。


今夏限りで休部のPL学園終戦 6-7で涙/詳細

逆転のPL、KKコンビ…屈指名門が休部/写真特集

1号は野田、25年連続入団も/PL学園卒プロ選手


78年夏

準決勝、決勝と土壇場ミラクルでサヨナラ勝ち。ここから「逆転のPL」が始まった

<全国高校野球選手権:PL学園5-4中京>◇8月19日◇準決勝◇甲子園


チーム 101112
中  京
PL学園1X

【中】武藤、黒木、武藤-阪本

【P】西田-木戸

 

<全国高校野球選手権:PL学園3-2高知商>◇8月20日◇決勝◇甲子園


チーム 
高知商 
PL学園3X

【高】森-坂上

【P】西田-木戸

78年夏決勝 高知商戦の9回裏、逆転となる二塁打を放つPL学園・柳川。9回裏に2点差をひっくり返し優勝を飾った
78年夏決勝 高知商戦の9回裏、逆転となる二塁打を放つPL学園・柳川。9回裏に2点差をひっくり返し優勝を飾った

 62年春の初出場以来、これまで準優勝2回と全国制覇にあと1歩届かずに迎えた78年夏は2回戦から登場し日川(山梨)に5-2で勝利。西田-木戸のバッテリーを軸に熊本工大高との3回戦を2-0、県岐阜商との準々決勝を1-0と勝利した。準決勝は9回表を終え名門相手に4点のビハインド。しかし9回、先頭の4番西田の三塁打を皮切りに一挙に4点を奪い延長戦に持ち込むと12回、押し出し四球でサヨナラ勝ちを飾った。

 続く決勝も2点ビハインドの9回、3番木戸の犠飛、4番西田の適時打で同点とし最後は5番柳川が左中間を深々と破るサヨナラ打。奇跡的な逆転劇を続け、初優勝を飾った。決勝戦のテレビ視聴率は高校野球中継歴代最高となる50・8%を記録した。

 

81年、82年春

センバツ連覇で80年代黄金時代の序章。81年はまたも逆転サヨナラV、82年は終盤に突き放す

<センバツ高校野球:PL学園5-4印旛>◇1981年4月8日◇決勝◇甲子園


チーム 
印  旛
PL学園2X

【印】佐藤-月山

【P】西川-田渕、高橋


 

<センバツ高校野球:PL学園15-2二松学舎大付>◇1982年4月5日◇決勝◇甲子園


チーム   
PL学園  15
二松学舎大付

【P】榎田-森

【二】市原、萬羽、河野、市原-尾鼻

(本)佐藤、松田(P)上地(二)


 吉村、西川、若井らを擁した81年春は岡山理大付との1回戦を5-0、東海大工(静岡)との2回戦を1-0、日立工(茨城)との準々決勝を8-2、倉吉北(鳥取)との準決勝を4-0で勝利し決勝へ。印旛(千葉)との決勝は9回1死走者なしからの3連打でサヨナラVを飾り、「逆転のPL」の本領を発揮した。

 榎田、森らを擁した翌82年春は東北(宮城)との1回戦を4-1、浜田(島根)との2回戦を2-1、箕島(和歌山)との準々決勝を1-0、横浜商(神奈川)との準決勝を3-2(9回サヨナラ)で勝利し決勝へ。二松学舎大付(東京)との決勝は1回表に先頭の佐藤がセンバツ決勝史上初となる先頭打者本塁打で勢いをつけると終盤の大量得点で突き放し、30年第一神港商(兵庫)以来、2校目となる春連覇を果たした。

 

83年夏

KKコンビが甲子園に登場。夏春夏3連覇目指すやまびこ打線の池田を粉砕し、主役交代を印象づけた

<全国高校野球選手権:PL学園7-0池田>◇1983年8月20日◇準決勝◇甲子園


チーム 
池  田
PL学園

【池】水野-井上

【P】桑田-小島

(本)桑田、住田、小島(P)

 

<全国高校野球選手権:PL学園3-0横浜商>◇1983年8月21日◇決勝◇甲子園


チーム 
横浜商 
PL学園

【横】三浦-森屋

【P】桑田、藤本-小島

(本)清原、加藤(P)

83年夏決勝 横浜商を破り、優勝し喜ぶ清原(右端)らPL学園の選手たち
83年夏決勝 横浜商を破り、優勝し喜ぶ清原(右端)らPL学園の選手たち

 5季連続出場を果たすことになる清原、桑田のKKコンビが甲子園に初登場。チームの前評判は決して高くなかったが、所沢商(埼玉)との1回戦を6-2、中津工(大分)との2回戦を7-0、東海大一(静岡)との3回戦を6-2で勝利し8強入り。高知商との準々決勝を10-9と競り勝ち迎えた準決勝の相手は「やまびこ打線」とエース水野で夏春夏の3連覇を狙う横綱・池田(徳島)。PLは2回に桑田、住田の連続本塁打などで4点を先制すると、4回にも小島が本塁打を放ち、公式戦で被本塁打ゼロだった水野に下位打線で3発。守っても桑田が「やまびこ打線」を完封し投打で池田を圧倒し、甲子園の主役の座を奪った。決勝も好投手・三浦を擁する横浜商(神奈川)に勝利し、全国制覇を果たした。


84年春、84年夏、85年春

3季続けて優勝には届かず。それでも横綱であり続けた

<センバツ高校野球:PL学園1-0都城>◇1984年4月3日◇準決勝◇甲子園


チーム 1011
都  城
PL学園1X

【都】田口-矢野

【P】田口、高松、桑田-清水孝

 

<センバツ高校野球:岩倉1-0PL学園>◇1984年4月4日◇決勝◇甲子園


チーム 
PL学園
岩  倉

【P】桑田-清水孝

【岩】山口-浅見

 

<全国高校野球選手権:PL学園3-2金足農>◇1984年8月20日◇準決勝◇甲子園


チーム 
金足農 
PL学園

【金】水沢-長谷川

【P】桑田-清水孝

(本)桑田(P)

 

<全国高校野球選手権:取手二8-4PL学園>◇1984年8月21日◇決勝◇甲子園


チーム 10
取手二 
PL学園

【金】石田、柏葉、石田-中島

【P】桑田-清水孝

(本)吉田、中島(取)桑田(P)

 

<センバツ高校野球:伊野商3-0PL学園>◇1985年4月6日◇準決勝◇甲子園


チーム 
伊野商 
PL学園

【伊】渡辺-柳野

【P】桑田-杉本

(本)松山(P)


 多くの名勝負を繰り広げながら3季続けて優勝には届かなかった。84年春は砂川北(南北海道)との1回戦を18-7、京都西との2回戦を10-1、拓大紅陵(千葉)との準々決勝を6-0で勝利し4強入り。都城(宮崎)との準決勝は相手エースの大型左腕・田口の前に無得点のまま迎えた延長11回、2死一塁から桑田が打ち上げた平凡なフライを右翼手がサヨナラ落球。劇的な幕切れで優勝に王手をかけた。初出場の岩倉(東京)との決勝は、自慢の強力打線が相手エース山口の前に1安打完封され、桑田の14奪三振の力投も実らず敗れた。

 84年夏は享栄(愛知)との1回戦を14-1、明石(兵庫)との2回戦を9-1、都城(宮崎)との3回戦を9-1、松山商(愛媛)との準々決勝を2-1で勝利し4強へ。「雑草軍団」と呼ばれた初出場の金足農(秋田)との準決勝は、相手エース水沢の好投の前に終盤に入り1点を追う苦しい展開。8回裏1死から清原が四球で歩き、続く桑田がカーブを右翼ポール際に運ぶ技ありの2ランで逆転。崖っぷちに追い込まれながら勝った。「のびのび軍団」取手二(茨城)との決勝は、3点を追う8回裏に2点を奪い、9回裏に清水哲の本塁打で追いつき延長戦に入るも10回表、爪を痛めながら力投を続けた桑田が10回に3ランを浴びるなど力尽き敗れた。

 優勝候補の大本命として出場した翌85年春も浜松商(静岡)との1回戦を11-1、宇部商(山口)との2回戦を6-2、天理(奈良)との準々決勝を7-0で勝利し4強入りしたが、エース渡辺を擁する伊野商(高知)との準決勝は清原が3三振を喫するなど打線が封じ込まれ、2年続けて初出場校に苦杯をなめた。


85年夏

KKコンビが集大成V

<全国高校野球選手権:PL学園29-7東海大山形>◇1985年8月14日◇2回戦◇甲子園


チーム  
東海大山形
PL学園 29

【東】藤原、安達-武田

【P】桑田、井元、小林、清原-杉本

(本)安本、内匠(P)

 

<全国高校野球選手権:PL学園4-3宇部商>◇1985年8月21日◇決勝◇甲子園


チーム 
宇部商 
PL学園1X

【都】古谷-田処

【P】桑田-杉本

(本)清原2(P)

85年夏決勝 PL学園対宇部商 サヨナラ勝ちで優勝、バットを持ったまま大喜びする清原(中央)らPLナイン
85年夏決勝 PL学園対宇部商 サヨナラ勝ちで優勝、バットを持ったまま大喜びする清原(中央)らPLナイン

 KKコンビが最後の3年夏に臨んだ。初戦となった東海大山形との2回戦では、大会史上初の毎回得点となる29得点で勝利。1試合の最多得点とともに最多安打32、最高打率5割9分3厘、最多得点打27、最多塁打45と大会記録を塗り替え、記憶にも記録にも残る戦いを見せた。津久見(大分)との3回戦を3-0、高知商との準々決勝を6-3、甲西(滋賀)との準決勝を15-2で勝利し決勝へ。宇部商(山口)との決勝戦は同点で迎えた9回裏2死二塁、松山主将がサヨナラ打を放ち劇的V。有終の美を飾った。


87年春、夏

立浪、片岡ら豪華メンバーで春夏連覇

<センバツ高校野球:PL学園3-2帝京>◇1987年4月2日◇準々決勝◇甲子園


チーム 1011
帝  京
PL学園1X

【帝】芝草、平山、芝草-木村

【P】野村、橋本、岩崎-伊藤

(本)尾崎(P)

 

<センバツ高校野球:PL学園8-5東海大甲府>◇1987年4月3日◇準決勝◇甲子園


チーム  1011121314
PL学園 
東海大甲府

【P】野村、橋本、岩崎-伊藤、松下

【東】山本-薄


<センバツ高校野球:PL学園7-1関東一>◇1987年4月4日◇決勝◇甲子園


チーム 
関東一 
PL学園

【都】平子、山岸-三輪

【P】野村、橋本-松下

87年春決勝 関東一高対PL学園 優勝が決まりマウンドでガッツポーズの橋本
87年春決勝 関東一高対PL学園 優勝が決まりマウンドでガッツポーズの橋本

<全国高校野球選手権:PL学園5-2常総学院>◇1987年8月21日◇決勝◇甲子園


チーム 
PL学園
常総学院

【P】野村、岩崎-伊藤

【常】島田-橘原

87年夏決勝 PL学園対常総学院 春夏連覇を果たしたPL学園・立浪(中央手前)はナインと喜ぶ。中央奥は片岡
87年夏決勝 PL学園対常総学院 春夏連覇を果たしたPL学園・立浪(中央手前)はナインと喜ぶ。中央奥は片岡

 立浪、片岡、そして野村、橋本、岩崎の投手3本柱など豪華メンバーを軸に春夏連覇を飾った。87年春は西日本短大付(福岡)との1回戦を3-1、広島商との2回戦を8-0で勝利。帝京(東京)との準々決勝は延長11回裏に長谷川がサヨナラ打を放ち勝つと、続く東海大甲府(山梨)との準決勝も延長14回表に長谷川の3点適時打が飛び出し勝利。関東一(東京)との決勝は終盤一気に突き放し3度目の春Vを飾った。

 1学年下の宮本も加わった87年夏は、中央(群馬)との1回戦を7-2、九州学院(熊本)との2回戦を7-2、高岡商(富山)との3回戦を4-0、習志野(千葉)との準々決勝を4-1、帝京(東東京)との準決勝を12-5で勝利。3年前の決勝で取手二の監督として対戦し敗れた木内監督が率いる常総学院(茨城)との決勝戦も、1回戦から6戦連続となる初回先制点を挙げると危なげなく勝利し史上4校目となる春夏連覇を飾った。



98年春、夏

春のリベンジをかけた松坂擁する横浜と伝説の死闘

<センバツ高校野球:PL学園3-2明徳義塾>◇1998年4月5日◇準々決勝◇甲子園


チーム 10
明徳義塾
PL学園1X

【明】寺本-津呂橋

【P】上重、稲田-石橋

(本)寺本(明)


<センバツ高校野球:横浜3-2PL学園>◇1998年4月7日◇準決勝◇甲子園


チーム 
横  浜
PL学園

【横】松坂-小山

【P】稲田、上重-石橋

98年春準決勝 横浜対PL学園 横浜に敗れ、PL学園・中村監督(中央)が18年間務めた監督を勇退。試合後に整列するPL学園ナイン
98年春準決勝 横浜対PL学園 横浜に敗れ、PL学園・中村監督(中央)が18年間務めた監督を勇退。試合後に整列するPL学園ナイン

<全国高校野球選手権:横浜9-7PL学園>◇1998年8月20日◇準々決勝◇甲子園


チーム 1011121314151617
横  浜
PL学園

【横】松坂-小山

【P】稲田、上重-石橋、田中雅

(本)小山、常盤(横)

98年夏準々決勝 横浜対PL学園 幕切れであいさつを交わす両ナイン。左端はPL学園・平石主将(背番号13)。左から3人目は横浜・松坂
98年夏準々決勝 横浜対PL学園 幕切れであいさつを交わす両ナイン。左端はPL学園・平石主将(背番号13)。左から3人目は横浜・松坂

 98年春は樟南(鹿児島)との1回戦を5-1、創価(東京)との2回戦を9-0、敦賀気比(福井)との3回戦を3-1で勝利。明徳義塾(高知)との準々決勝は1-1の同点で迎えた9回表、明徳義塾のエース寺本に本塁打を浴び勝ち越されるが、その裏追いつき、延長10回サヨナラ勝利を飾った。超高校級のエース松坂を擁する横浜(神奈川)との準決勝は2点リードを終盤にひっくり返され逆転負け。この試合を最後に、春夏16度出場で通算58勝、6度の優勝を飾った名将・中村監督が勇退した。

 98年夏は八千代松陰(千葉)との1回戦を6-2、岡山城東との2回戦を2-1、佐賀学園との3回戦を5-1で勝利。春夏連覇を狙う横浜(東神奈川)との準々決勝は高校野球史に語り継がれる一戦となった。松坂から2回に3点を先制するも、9回を終え5-5で延長戦に突入。11回、16回と勝ち越されながら驚異的な粘りで追いつき迎えた延長17回表、7回から登板の2番手・上重が2ランを浴び突き放された。17回裏、最後の打者・田中雅が松坂の250球目を見逃し三振。3時間37分、炎天下の死闘だった。横浜はこの大会で97年PL学園に続く、史上5校目の春夏連覇を飾った。