走りに走って、5点差をひっくり返した。第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)西東京大会で、光丘が2本のランニング本塁打で東京高専に16-6で6回コールド勝ちした。盗塁10個を決めるなど機動力で圧倒し、3年ぶりの夏初戦突破を決めた。

 光丘の「ランニングマン」が、ダイヤモンドを駆け抜けた。5点を先制された直後の1回裏、無死一、二塁から3番広田雄斗外野手(3年)のランニング3ランなど6点を奪って逆転。5回には大竹久遠(くおん)捕手(3年)が、中越えへの当たりで一気に生還した。高校初のランニング本塁打の直後に三塁打も放った広田は「5点取られて焦った。暴走気味だったけど、セーフでよかった」と大粒の汗を拭った。

 鍛え上げた機動力を存分に見せつけた。野々垣正史監督(53)は「同じ場面が有り得ない走塁が、野球の中で一番難しい」。練習の大半を「走ること」に費やした。自校のグラウンド全面が使用できるのは週1度だけ。「3時間の練習のうち、半分くらいは走者を置いたケース打撃をやる。シートノックを省くこともある」という徹底ぶりだ。この日は両翼98メートルの広い球場。監督の指示は「どんどん行け」。高校3本目のランニング本塁打だった大竹は「一塁を回ったときに外野がもたついたので、行けると思った」と胸を張った。

 点差が開いても、“足”は緩めなかった。グラウンド全面を使えない日は、一塁ベースに4人が並んで盗塁を狙う練習を繰り返す。狙いは「相手投手の動きを見て、リードを広めに取って揺さぶる。一番は度胸をつけること」(野々垣監督)。この日は6選手が左投手から8個、右投手から2個の盗塁を決めた。「ランニングホームラン2本も、盗塁10個も公式戦では初めて。思い切りよく走ってくれた」と選手をたたえた。

 全員が俊足というわけではない。大竹は50メートル走6秒2で学年トップクラスだが、広田は同6秒8。監督は「(広田は)入学した時は太っていて走れないし、守るところもなかった」と振り返る。過去最高成績は16強。ノンストップで歴史を塗り替える。【鹿野雄太】