足利工(栃木)の土屋圭輝投手(3年)が亡き父にささげる投球を披露した。初出場の夏大会の初戦に5回から登板。「ストライク先行で打たせて取る投球を心がけた」と、3回を2安打無失点に抑えた。

 小学3年時に父の伸昭さんが監督を務めるチームで野球を始めた。土屋は「ノックの打球が自分だけ強かった」と振り返る。厳しい練習に耐え、小学6年時には主将となった。その年、父が突然この世を去った。40歳だった。野球の師と大好きな父を同時に失った。

 父の死の翌日、広島石井琢朗打撃コーチが線香をあげに自宅を訪れた。足利工の同級生だった。誘われるがままにキャッチボールをした。石井氏から「パパを超えろ、頑張れ」と声を掛けられた。「尊敬していたプロ野球選手。その時期は大変だったが頑張って野球を続けようと思った」。その後、親戚に連れられて広島-ヤクルト戦を神宮球場で観戦した際には、石井氏に激励された。

 「石井さんと父と同じ足利工で野球をしたい」。そう思い続け、2人を追って入学した。3年の夏、背番号10を付け、2番手投手になった。マウンドでは石井氏の助言を思い出した。「捕手の後ろにお父さんがいると思って投げました」。父から勇気をもらって、堂々たる投球を披露した。小学生からの夢は甲子園出場。「どの相手でも抑えたい」と力強く語った。【秋吉裕介】