釧路工は、最速120キロに満たない右の下手投げエース関向が、稚内大谷打線を6安打3失点に抑えて完投勝利を挙げた。地面まで約5センチの低い位置から繰り出す緩いボールで相手を手玉に取り「今日は全く疲れなかった」と101球を投げた後に、ひょうひょうと話した。

 浮き上がる時もあれば、打者の手元から逃げていく時もある。「自分でもどこに行くか分からない」と苦笑いする球が武器だ。1年秋に上手投げから転向。お手本は「自分と同じように体が硬いらしい」という理由で、西武の牧田投手にした。さらに同じサブマリンで、元ロッテの渡辺俊介(39)の著著「アンダースロー論」も読み、細部に修正を加えた。この日は1度中指をマウンドにこすったが「手が低いほど、調子がいいんです」と胸を張った。

 小学生の時、飼育していた金魚が冬に死んだ。父の強さん(44)は「穴を掘って埋めてあげなさい」と言ったが、半年後に関向の机の中から、ひからびた状態で発見された。強さんが理由を聞くと「あの時は寒くて外に出られなかった」と返ってきた。父は「『相手がかわいそうだから内角には投げない』というほど気持ちの優しい子でしたが、今日は内角も突けていたし、いい投球だった」とほめた。

 北大会の初戦突破は、決勝で涙をのんだ2年前以来。「あの時の悔しさはおぼえています。今年は一丸となって甲子園」。今日18日の江陵戦も、相手エースの剛速球を気にせず、マイペースで勝利をつかむ。【中島洋尚】