第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)東東京大会で、昨夏準優勝の日大豊山が延長10回の熱戦を制し、2年連続の8強に進出した。スタメン唯一のルーキー、西村達貴内野手(1年)が先制打と高校1号ソロの2安打2打点と発奮。米国帰りの帰国子女で身長167センチの小兵が、フルスイングで勢いづけた。

 「日大豊山のアルテューベ」が、延長戦に持ち込む貴重な高校1号ソロを放り込んだ。1点ビハインドの9回1死。西村は初球、内角直球を鋭く右翼後方へ振り抜いた。「ライナーで、フルスイングを心掛けました!」。チームはここから一時勝ち越しに成功し、延長戦勝利に持ち込んだ。

 身長167センチの体から繰り出す、パワフルなスイングは米国仕込みだ。中3まで6年間、米ケンタッキー州に住んでいた。シンシナティにあるレッズの本拠地は車で15分の距離。「年間15試合くらいメジャーリーグを見に行ってました」。MLB観戦の中で手本としたのが、14年に首位打者、盗塁王、最多安打を同時獲得したアストロズのホセ・アルテューベだった。

 身長もほぼ同じ二塁手。西村は中学時代、現地の硬式チームに所属したが、同い年の選手は198センチから177センチと一回りも二回りも大きかった。「僕は一番小さい。だから体全体を使って打つようになりました」。守備力を含め、メジャー現役最小兵のプレースタイルに活路を見いだした。

 どうしても勝ちたい理由が、もう1つあった。父一徳さん(44)は愛工大名電(愛知)でイチロー(マーリンズ)の1学年上にあたり、ともに甲子園にも出場した外野手だった。この日は母幸子さんと妹瑳笑(さえ)さん(12)がスタンドに駆けつけたが「次の試合からは父が一時帰国して応援に来てくれる。活躍する姿を見せたいんです」。昨年8月、ともにマ軍戦観戦に行き、イチローと握手してもらった。写真は宝物だ。

 チームは逆転されては取り返す、を繰り返し、敵失で延長10回の接戦を制した。西村は2回にも左中間への先制二塁打を放ち、2安打2打点をマーク。上野満監督(52)は「1年生の彼が加わって、3年生もやらなきゃ! と刺激されての結果だと思います」と、起爆剤としての働きぶりをたたえた。次も家族みんなの前で、大暴れする。【鎌田良美】

 ◆西村達貴(にしむら・たつき)2000年(平12)11月20日、愛知・豊橋市生まれ。小3で野球を始める。小4から父の転勤で家族で米ケンタッキー州へ。現地の中学に通い、硬式野球チーム「AT THE YARD」で3年時に全米25位。単身帰国して日大豊山に進学。「日本語がパッと出てこない」というほど海外生活になじんでいたため、国語、特に古文が苦手。1年夏にベンチ入り。家族は両親と妹。167センチ、62キロ。右投げ左打ち。

 ◆本家は4安打 アストロズ・アルテューベは19日のアスレチックス戦で左安、左2、中3、三振、中安の5打数4安打。打率3割5分4厘は、再び大リーグ全体のトップに立った。

 ◆父一徳さんの甲子園 90年夏、愛知県大会で23打数9安打(打率3割9分1厘)、7盗塁と暴れた。甲子園1回戦では2番センター西村、3番レフト鈴木(イチロー)で出場し、エース南竜次(元日本ハム)でこの大会を優勝した天理に1-6で敗れた。