高校通算43本塁打の注目スラッガーが、初戦で姿を消した。松本第一(長野)の5番新山進也内野手(3年)は4回無死一塁から中前打でチャンスを広げ、一塁ベース上でガッツポーズ。後続も続いて先制点に貢献したが、甲子園出場8度を誇る長野商に1-2の逆転負け。新山は「頑張ったことは頑張ったけれど、心残りです」と目を潤ませた。

 実は兄雄一さん(21)のバットとともに夏を終えた。黒いバットは、兄が上野原高(山梨)時代に使用していたもの。新山は高校2年から、この兄のバットで33本塁打を放った。兄はケガの影響でレギュラーにはなれず甲子園も夢に終わったため、「兄のバットを甲子園に連れて行きたい」と練習に励んできた。

 今春の中信地区大会では不振だったが、「スランプの時こそ、打撃のことをいったん忘れて守備と走塁に専念しろ」と兄の助言を実践し、6月の山梨学院との練習試合では、特大本塁打も放つなど、9打数5安打と復調していた。2回戦屈指の好カードで惜敗したものの、兄のバットとともに戦い抜いた記憶は、きっと兄弟の絆を強くする。【戸田月菜】