拓大紅陵(千葉)が、6回コールド勝ちで初戦を突破した。まるで、選手たちの不安な気持ちを消し去るような初回の攻撃だった。3番度会基輝主将(3年)の先制適時二塁打など7安打で一挙6得点を挙げ試合の主導権を握った。

 前日には、元野球部員が、知人の少女に売春を斡旋(あっせん)したとして、警視庁少年育成課に逮捕されたばかり。選手たちの動揺は否めなかった。出場こそ許可されたものの、自分たちは本当に出場をしていいのだろうか。夜、沢村史郎監督(51)のもとに届いた度会主将のメールにはそんな思いが込められていたという。

 試合前、沢村監督は選手たちに語りかけた。「今日はいろいろな目で見ている人がいる。でも、お前たちは野球が好きで2年半、精進してきたんだから、楽しんで野球をやろう」。よそ見をしている暇はない。目の前の試合へ。全員の心を1つにした。先制点をとり、つなぎの打線でたたみかける。選手たちは「紅陵らしい野球を」を合言葉に戦った。

 「今までやってきたことを試合に出すだけ。自分らしいバッティングができました」と度会主将は振り返った。周囲の注目はまだまだ続く。しかし、選手たちは自身を信じ、頂点だけを見つめ走り続ける。【保坂淑子】