秋田の夏では初の「単独廃校ルール」で出場した二ツ井が、10-3の7回コールドで大曲農太田分校を破り、記念すべき白星を挙げた。第2シード能代松陽から「レンタル移籍」の5番高坂虎楠(こなん)外野手(1年)が、3打席連続長打で6打点と大活躍。明日14日の2回戦で母校と対戦する。

 2020年度限りで廃校(能代の定時制との統合)が決まっている二ツ井が、県高校球史に残る1勝を挙げた。同県初の単独廃校ルール適用校として公式戦初勝利。選手10人はおごることなく、大曲農太田分校の選手10人と互いの健闘をたたえ合った。

 能代松陽から派遣された高坂が爆発した。初回に左翼越え2点打、2回に右翼越え2点三塁打、さらに4回にも中越え2点三塁打を放ち、6打点。7回にはウイニングボールの右飛まで手にした。スタンドでは、高坂を派遣した能代松陽の工藤明監督(41)と夏メンバー20人を除く選手53人も友情応援。高坂は「応援が力になりました。二ツ井の選手として守備でもいいプレーができました」と胸を張った。岩谷裕士監督(41)は「本当の助っ人ですね」と舌を巻いた。

 昨夏は小坂との連合チームで出場した。だが部員7人の今春は新1年生の入部者がなく、小坂との連合も組めなくなり単独廃校ルールを申請した。能代松陽から高坂と五代儀雅妃(いよぎ・もとき)、清水真央の1年生3人の派遣を受け、春の地区予選も戦った。

 高坂と五代儀にとって成田武正主将(3年)と湊大我捕手(2年)は鷹巣中の先輩。両校間の距離は約20キロで合同練習は限られたが、高坂は「同じ中学の先輩がいてやりやすい」とチームに溶け込んでいる。

 野球を続けられる喜びと、選手を派遣してくれた能代松陽への感謝の念。次なる2回戦の相手は、その能代松陽だ。高坂は「今は二ツ井の選手。松陽戦も打ちたい」ときっぱり。秋には再び他校と連合チームを組む予定の岩谷監督は「できる限りの策を練って恩返しの気持ちで戦いたい」と話していた。【佐々木雄高】

 ◆単独廃校ルール 部員不足で連合チームも組めない高校が近隣校から野球部員を借りて大会に参加できる特別措置。00年から導入され、12年に改正された。出場可能な母校部員が最低5人以上9人未満在籍していることが条件で計10人になるまで派遣を受けられる。