<君の夏は。>

 星槎国際湘南(神奈川)半田翔太郎内野手(1年)は3年前に亡くなった親友と戦っている。4回の第3打席。いつもと同じように気合の雄たけびをあげた。「斗星(とうせい)が打席で声を出していたんです。斗星のためにも甲子園に行きたい」。振り抜いた打球が中堅手のやや左に落ちるのを見ると、迷わず一塁を蹴って二塁を陥れた。

 小学3年で、中村斗星君と同じクラスになった。気の合った2人は毎日一緒に遊ぶようになった。少年野球チームに誘ったのも当然の流れだった。斗星君は捕手になり、小学5年の新人戦でバッテリーを組んだ。しばらくして、親友の急性骨髄性白血病が発覚した。

 入院先の病院まで片道5・5キロの道のりを、来る日も来る日も走った。到着が遅くなれば、階下からペンライトを振った。「もともと持久走とか速くなかったんですが、ほぼ毎日走ったおかげで足腰が鍛えられました」。中学で所属した横浜緑ボーイズでは、内野手として全国大会出場へ導いた。

 心身ともに鍛えられた1年生リードオフマンは、この日も3安打の活躍で勝利に貢献した。桐蔭学園(神奈川)監督時代に巨人高橋監督らを育てた土屋恵三郎監督(63)も「うちの目玉選手。(桐蔭学園OBで現阪神打撃コーチの)平野恵一が1年生の時よりいいかも」と目を細める。

 実は、斗星君の姉祐海さんは立正大立正(東東京)野球部のマネジャーだった。弟の遺志を継ぎ、3年間全うしたが、先日の4回戦で敗退した。「祐海ちゃんの分も1つでも多く勝ちたい。斗星と一緒に頑張ります」。ユニホームの左ポケットには親友からの手紙をしのばせる。高校野球初めての夏。168センチの小兵の二塁手は、だれよりも勇ましい。【和田美保】