帝京(東東京)は、初回に田中麟太郎捕手(3年)の3ランで目覚め、今大会初の2桁安打を放って8強一番乗り。

 バットを巻き込むようにとらえた打球が、左翼席に吸い込まれた。田中麟が1回2死二、三塁で放った一打だ。2球目、内角高めの速球を逃さなかった。「見逃した1球目も内角だったんで。監督さんから『内に来るからヘッドの回りをよくしろ』といわれていました」。価値ある3ランをこう振り返った。

 帝京には今大会3試合目にして初の先制点だった。この一打で、打線が目を覚ました。11安打10得点。初のコールド勝ちを決めた。前田三夫監督(68)は「徐々に上がってきてる感じかな。まだ手探りです」。1試合だけでは喜べない。昨年は準々決勝で城東に6-7と敗れた。夏の甲子園はもう5年間もごぶさただ。

 11年に甲子園に出場した帝京を当時、東京・立川の小学生だった田中麟は見ていた。「伊藤拓郎投手(元DeNA)がいました。帝京は体が大きくて、打撃がよかったです」と話す。中学では福生シニアに進み、そこでバッテリーを組んだのが、早実の服部雅生投手(3年)だった。「僕らの代が(甲子園に)行ってやる、と思っています。向こう(服部)は2回も出てるんで悔しいですから」。

 そんな甲子園への思いは打率に表れる。この日は4打数2安打。通算では9打数6安打の6割6分7厘にもなる。捕手としても、チームを引っ張るつもりだ。「自分のリードで勝ちに導ける。松沢もリードしやすいです」。先発の松沢海渡投手(2年)は2安打で完封した。沈黙していた帝京が、投打に持てる力を発揮し始めた。【米谷輝昭】