夏の甲子園をかけた長崎県大会準決勝で長崎日大と清峰が対戦し、6-4で勝利した清峰が9年ぶり甲子園に王手をかけた。

 遠く離れた広島で、その一戦を特別な思いで見つめた2人がいた。広島の主軸投手として活躍する今村猛投手(26)と大瀬良大地投手(26)だ。

 2人は8年前の2009年長崎大会準々決勝で激突。この日と同じ7月22日だった。その年の春のセンバツ優勝投手の今村擁する清峰を、長崎日大のエース大瀬良が4安打1失点に抑えて勝利に導き、甲子園出場まで上り詰めた。

 あの日から8年。本拠地でのナイターに臨む前、2人は互いにそれぞれの家で母校の戦いをチェックし、LINE(ライン)でやりとりしていた。「いつもとは違う感覚。感慨深かった」と今村が言えば、大瀬良は「どっちかが勝ってもおかしくない。いい試合をしてくれた」と両校の健闘をたたえた。

 試合結果は、8年前とは反対に終わった。今村、大瀬良ともに「いい試合をしてくれた」と優しくほほえんだ。そこに勝者も敗者もない。時を経て、同じ舞台でともに戦う2人は両校をたたえた。

 大瀬良は「仲間と一生懸命やってきたことは掛け替えのない思い出。そういうものを大切にしてもらいたい」とエールを送った。

 あの夏の経験があるからこそ、今がある。大瀬良の言葉は、涙をのんだ全国の球児たちにも届けたい。【前原淳】