<君の夏は。>

 聖望学園・西沢海投手(3年)の気持ちは切れていなかった。7回裏1死から浦和学院打線に連続二塁打を許し0-2。ここでマウンドを降り、左翼に下がった。しかし2番手投手が2四死球に適時打を浴びるなどで2死満塁。ここで再びマウンドに上がると、4番蛭間にこん身のストレートで二飛。8回は内野安打を許すも無失点に抑えた。「(7回2死満塁は)変化球のサインでしたが首を振って直球を投げました。直球には自信があります。打たれたらしょうがないと思って投げました」。

 打線が1安打に抑え込まれたため、0-3で敗戦。だがエースは最後まで意地を見せ、浦学打線に立ち向かった。

 ネット裏では父達(さとし)さん(55)が見守った。「外国でも通用するように、それと私が釣りが好きなので海(かい)と名付けました」。父は入間向陽(埼玉)の野球部監督。今春の地区大会で聖望学園に0-11とコールド負けした。息子に5回無安打に抑え込まれ「やりすぎだよ」とあきれさせた。

 普段は仲の良い親子。自宅通学の息子は父と野球談議もするが、いつの間にか大好きな釣りの話に「脱線」してしまうという。厳しい練習の合間を縫って2人で県外まで渓流や海に釣りに出掛ける。

 「お魚、お魚、でっかいマグロを釣り上げろ!」。将来の夢は漁師という西沢が打席に立つとスタンドの仲間がこんな応援歌で盛り上げる。「高校野球に悔いはありません。勝てる投手になりたい。勝負強い投手になります」。次の舞台、大学野球で「でっかいマグロ」を釣り上げてみせる。【福田豊】