変化球がキレまくった。初回1死三塁から、沈むチェンジアップを多投して連続三振で切り抜けた。6回1死一、三塁ではスライダーでまたも連続三振。「低めに投げた変化球を相手が手を出してくれたのは、ラッキーだった」。相手のバットをかすらせもしなかった宝刀チェンジアップは、今春の県大会前にマスターしたものだった。「スライダーだけじゃ打ち取れないと思った。投げ始めてすぐにしっくりきた」。最速143キロの直球に縦の変化が加わり、投球の幅を広げて大舞台を迎えていた。

 責任感の強い男だ。福島大会準決勝では日大東北を8回2失点に抑えると、試合後は過呼吸になるまで号泣した。2年連続で初戦の相手は初出場だったが「相手をなめるわけじゃないけど、あまり意識はしてなかった」とこの日は冷静に右腕を振った。斎藤智也監督(54)は、エースの重責を全うした斎藤に最上級の賛辞を送った。

 「いやーよかったね。予想外。変化球がよかった。欲を出さずに1球1球丁寧にスイスイと投げていた。簡単に四球も出さなかったしね。ここまで調子がいいと、継投は考えられなかった」

 壁を破る夏だ。過去14度の出場で、4度の準々決勝進出が最高だ。斎藤は強気に宣言した。「8強止まりと言われるのは悔しい。自分らの代で、その壁を絶対に越える」。発した言葉に責任を持つのがエース。まだこんなところで、負けられない。【高橋洋平】