11年連続14度目出場の聖光学院(福島)が5-4で聖心ウルスラ学園(宮崎)を下し、2年連続で3回戦に進出した。先制を許すも、3-3の5回に相手投手の暴投で勝ち越した。4回から2番手で登板したエース右腕斎藤郁也(3年)が、完封した10日の1回戦(おやかま山陽)に続いて6回4安打7奪三振1失点と好投し、逆転勝ちを呼び込んだ。19日の3回戦は広陵(広島)と秀岳館(熊本)の勝者と激突する。

 聖光のエースとしての自覚が勝った。最後の打者を遊ゴロに打ち取ると、斎藤は両手を広げてガッツポーズをつくると、悠然と整列に加わった。9回先頭に本塁打を浴びて今夏の甲子園通算15イニング目で初失点。1点差まで詰め寄られたが、「1」を背負う斎藤は動じていなかった。

 「チェンジアップが抜けてしまった。ホームランはしょうがないと思って吹っ切れた。切り替えてやれた。1つ2つ勝ちにここ(甲子園)に来たわけじゃない。背番号1としての仕事はできた」

 3点も先制され、1点ビハインドの4回からマウンドに上がった。安打と死球で無死一、二塁のピンチをまねくが、二塁走者の大きいリードに佐藤晃一捕手(3年)が反応。けん制で走者を刺す好守備に助けられてからは、波に乗った。その後は多彩な変化球でこの日も相手打線を幻惑。1回戦の完封を後押ししたチェンジアップをあえて減らし、90キロ台のスローカーブを積極的に織り交ぜて投球を組み立てた。「何点とられても後半に得点をとると思ってやってきた。焦りはなかった」とエースの力投が反撃ムードを駆り立てた。

 斎藤が人一倍、聖光のエースとしての重責を感じていた。試合当日の朝、帽子のひさしの裏に「自信」の2文字を書き込んだ。初戦の前ではなく、2戦目の試合前に書き込んだのは、理由があった。

 「甲子園で完封して、もう書いてもいいんじゃないかと思った。小さい時から聖光のエースを見てきた。歳内さん(宏明、現阪神)、岡野さん(祐一郎、現東芝)…。堂々と投げていたのがエース。近づいている“自信”がある」

 斎藤智也監督(54)もエースの階段を1段ずつ上がっていく斎藤を評価した。「接戦は覚悟していた。今日の斎藤は制球が安定していた。躍動してくれた」。無四球でまとめた斎藤はすでに3回戦へ気持ちを切り替えていた。「相手のレベルも上がってくる。自分のできることを全力で出し切りたい」。真のエースへ成長を続ける斎藤の右腕が、次もチームを勝利に導く。【高橋洋平】