静岡は、春翔一朗投手(3年)が奪三振ゼロの84球で駒大苫小牧(北海道)を4安打完封した。チーム打率3割6分9厘の駒大苫小牧打線を術中に誘い込み、今大会の一番乗り。「気持ち良く投げられた。気づいたら終わっていました」と喜んだ。

 直球は最速134キロだが「タイミングさえずれれば打ち損じる」が信条。試合前の段階で不調を感じると、あえてリリースポイントをずらし「垂れるくらいの直球」を操った。スライダーにも細かく球速差をつけ、内野ゴロを量産。3つの併殺打を打たせた。日大三の井上や、明徳義塾(高知)の市川、大阪桐蔭の根尾ら本格派を「誰もが憧れる投手」とし、自身とは別の存在と位置づける。「大事なのは力のなさを自覚すること。そんな球を投げられない人は全国にいっぱいいる。偉そうだけど、そういう投手に夢を与えたい」と胸を張った。

 「春」という名字で注目されるエースは「ご先祖様に感謝したいです。春も優勝を狙っていますが、夏につながる春にしたいと思います」。春一番から、台風の目になってみせる。

 ▼静岡の完封勝ち 夏は6度記録しているが、春は静岡中時代の28年に上野精三が島根商を5-0で完封して以来90年ぶり。

 ▼静岡・春が奪三振ゼロで完封した。奪三振ゼロの完封は春夏を通じて08年夏の伊波翔悟(浦添商)以来。春は83年三浦将明(横浜商=元中日)以来35年ぶりで、金属バット採用後(春は75年以降)3人目になる。三浦は準々決勝の駒大岩見沢戦でマークした。当時「決勝が目の前にチラついて」と、打たせて取る投法に切り替えた。投球数は三浦の88球に対し、春はさらに少ない84球。内野ゴロ16本を打たせ、併殺打が3本あるから19アウトをゴロで稼いだ。巨人菅野、オリックス金子らは「全アウトを27球で奪うのが理想」とする。奪三振よりも攻撃のリズムを生むとされる究極の省エネ投法。バックも無失策で支えた。