第100回全国高校選手権記念大会(8月5日開幕、甲子園)の代表校を決める熱戦が23日、九州のトップを切って沖縄で始まった。終戦を迎えた1945年(昭20)に開校され96年以来の甲子園復活を目指す古豪、前原は伝統やOBの願いを背負い完封発進した。

 赤いTシャツを着て大声援を送る一塁側スタンドの父母らの後押しを受け、選手も血がたぎった。大川基樹監督(46)が「気持ちが前面に出ていた」というエース末吉泰宜投手(3年)が「自分たちの代で甲絶対子園に出る」と投打に活躍だ。137キロの自己最速を記録する力投で6奪三振、5安打でシャットアウト。2回2死二塁で左越えに適時二塁打を放ち、先制点を奪った。

 負けられない思いがある。大会前、96年に沖縄水産を延長12回の死闘で下し2度目の夏切符を手にしたエース金城敦さんら当時のメンバー4人が激励に訪れた。「力の差では沖縄水産が勝つと思われていたが、自分たちの野球が好きな気持ちはどこにも負けていなかった」と当時の雰囲気を伝えられ、選手の様子に大川監督は「自分たちもやればできると芽生えたと思う」と手応えを感じている。

 今年1月には約10年、OB会長を務めて甲子園出場をだれよりも願っていた天顔博充さんが亡くなり、末吉は「グラウンドでサポートしていただいていた。会長さんに甲子園出場で恩返ししたい」と意気込む。

 この日は、戦争の犠牲者を追悼する「慰霊の日」。沖縄県民にとって特別な1日でもあった。さまざまな思いを胸に、記念の年に伝統校の名を刻む。【菊川光一】