金足農(秋田)のエース右腕・吉田輝星(3年)が帝京(東東京)を相手に先発し、5回1安打8奪三振1失点とほぼ完璧な投球を見せた。最速147キロの直球で相手打線を封じ込み、春夏3度の全国優勝を誇る敵将の前田三夫監督(69)をうならせた。夏本番前の大一番を7-3で制し、7月13日の初戦に向けて調整を続ける。

 どうだ! この俺が、金農の吉田輝星だ! 雑草軍団の絶対的エースが、名門帝京を相手に仁王立ちだ。伸びのある直球を小気味よく投げ込むと、相手のバットはかすりもしない。5回までに圧巻の8奪三振。U18日本代表候補にも選ばれた剛腕は東北の枠に収まらず、もはや全国区だ。

 吉田 帝京相手に8個の三振は取れている方。自分の投球がしっかりできた。抑えられて自信になる。

 好投する一方で、反省も忘れなかった。この日唯一の失点は4回2死走者なしから。四球を許した直後の左翼線の当たりを、佐々木大夢左翼手(3年)が捕球に手間取り、一気に一塁走者の生還を許した。吉田は「失点の場面はチーム全体で詰めていかないと。夏は1つのプレーで足をすくわれる」と気を引き締めた。

 秋田の剛腕に、百戦錬磨の名将・前田監督が脱帽した。試合後の閉会式が終わると、“前田節”連発で吉田を褒めちぎった。

 前田監督 完全に抑えられましたね。直球に重たさ、伸び、威力があるんだろうね。制球もいい。素晴らしいや。思い切って振らせたんだけど、空振りが多かった。当たっても振り負けている。こりゃー苦戦だ。なかなか対戦できるレベルじゃない。甲子園でも評判になるような投手。あの投手を持っていると、楽だね(笑い)。

 昨秋、今春の都大会8強の帝京を封じ込め、いよいよ夏本番が始まる。初戦は7月13日。秋田北鷹と大曲農の勝者と激突する。吉田は「いい感じで夏の大会に入れる」と宣言。今年は学校創立90周年と、第100回記念大会の夏が重なった。ダブルメモリアルイヤーに、吉田が燦然(さんぜん)と輝く。【高橋洋平】