第100回全国高校野球選手権記念大会(8月5日開幕、甲子園)の福島大会が7日から開幕する。連載の第2回は、春夏連続出場した00年以来の頂点に挑む福島商を特集する。00年生まれ世代の3年生を中心に「打倒・聖光学院」の期待を背負う。51年に初出場した古豪復活へ、投打の軸となるエース右腕・阿部大樹(3年)、主将の阿蘇航新内野手(3年)は使命感を力に、最後の夏に臨む。

 00年7月29日、主戦の阿部は福島市内で産声をあげた。福島商が8度目の夏切符をつかんだのが、前日28日。阿部は「自分が生まれてから、福島商は1度も甲子園出場をつかんでいないことを知り、何かの運命を感じた。聖光学院を倒したくて、この学校を選んだ。100回大会の巡り合わせもうれしいし、自分たちの代で行かなきゃいけない」。伝統ある左胸の「Fc」の文字を見つめながら、闘志と使命感に燃えた。

 最後の夏。決勝で王者を倒す準備は着々と整えてきた。「徹底的に配球を読んで、ライナーで捉えてくる。四球覚悟で、強気に厳しいコースを狙っていくしかない」。今冬は雪の積もる中、長短のダッシュなど走り込んで下半身強化。ブルペンではホームベースを1サイズ大きくし、コースギリギリを投げ分けた。常に聖光学院の主軸・矢吹栄希、須田優真(ともに3年)らを想定。打ち取るイメージは出来ている。

 守備力も磨いてきた。緩急のついたボールを正面で捕球することから始め、現在は応用編に突入。あえてスタートを遅らせて手を伸ばしてギリギリ捕れる位置での捕球を徹底。今春の県大会は5戦12失策と甘さもあるが、阿蘇主将は「球際の強さは格段と上がった」と手応えを得つつある。

 昨秋の県大会準々決勝で0-10、今春の同決勝では阿部や成長著しい大内良真投手(2年)を温存し、3-18と大敗を喫した。大河内陸投手(3年)の父は、同校で81年春夏連続で甲子園に出場し、プロ野球の阪急(現オリックス)などで活躍した古溝克之投手(54=現函館大コーチ)とプレー。福島リトルシニア時代には甲子園出場経験のある複数の先輩に指導を受けてきただけに「福商が甲子園に行けば一番盛り上がるし、地域の方の応援を感じています」と恩返しを誓う。

 敵将・斎藤智也監督も「打撃では福商が振れているかな」と警戒する。投手を含めた守備の安定が命運を握る。【鎌田直秀】