第100回全国高校野球選手権記念大会の熊本大会が4日、リブワーク藤崎台で開幕した。天草工は1点ビハインドの9回1死からセンバツ優勝経験のある古豪、済々黌を逆転するミラクル劇。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界文化遺産登録にわく地域の活力に乗って最高のスタートを切った。

 世界文化遺産登録された地元住民から「天工(あまこう)」と呼ばれ愛される天草工が、ミラクル逆転劇を演じた。1点を追う9回1死一、二塁。「最後まであきらめないのが自分たちの野球」という2番・山本晃央内野手(3年)が「実家の石材店の墓石磨きで養われた」という粘り強さを大一番で発揮した。

 昨夏まで春夏4季連続甲子園の秀岳館を参考にしたノーステップ打法で、内角低めの直球を左越え2点適時二塁打とし土壇場でひっくり返した。二塁ベース上、右手でガッツポーズが飛び出す会心の一撃に「地域の方々への恩返しが合言葉だったのでうれしい」と喜んだ。

 センバツV経験のある済々黌へのリベンジに燃えていた。抽選会前の練習試合で0-3で敗れた。手嶋栄二監督(37)によると、その試合後「またよろしくお願いします」程度の感じだったが、対戦が決まり「選手の目の色が違った」という。天草から多くの優秀な中学生が高校進学で熊本市内に流出する経緯もあり、この日2番手で登板した天草出身の済々黌、田端翔太投手(3年)に気迫勝ちした。

 昨夏、リブワーク藤崎台で球磨工に8強を阻まれ、指揮官は「ここ(リブワーク藤崎台)でしか止まった時間は動かせないぞ」と鼓舞。まさにナイン一丸での執念の初戦突破だった。【菊川光一】