1点を追う9回2死一塁、代打として主将の橋本真也内野手(3年)が送られた。右打席に入る瞬間、ちょうど一塁側に詰めかけた応援団が目に入った。その中には、駆けつけた島田稔理前監督(39)の姿もあった。「いつもフルスイング」。前監督の声がよみがえった。

 3球目、思い切り振ったバットに当たった打球は、遊ゴロ。二封となり、試合終了。「絶対に打ってやるという気持ちだった。あんな形で終わって、悔しいです」と涙をこぼした。

 今年3月、監督が交代した。昨年7月から率いた前監督が、3月1日に病気が発覚して休職となった。選手には衝撃が走ったが「まとまっていこう」と団結。復活の願いを込めて折り鶴と色紙を贈った。病状が安定すると、個別で見舞いにも訪れた。米国独立リーグでプレーした経験のある前監督には、打撃を徹底的に鍛えられた。この日の試合前には「今まで言われてきたことを、意識してやれよ」と声を掛けられていた。

 最後の夏、最後の打席。前監督との約束を守った橋本は「フルスイングできました」と胸を張った。その表情は、とても晴れやかな笑顔だった。【保坂恭子】