甲子園で平成初の勝利投手になった麦倉洋一監督(46)が率いる佐野日大は3回戦進出を果たした。1-1の5回に開会式前日にメンバー登録した5番松本翔大外野手(2年)の2点適時打で勝ち越しに成功。その後も加点し、7回コールド勝ちを収めた。

 采配ズバリの麦倉監督は「(松本は)クリーンアップを打てる人間。気持ちの強い選手なので(ベンチに)入れました」と目を細めた。

 今大会は不思議な縁がある。同校OBである麦倉監督は平成元年の夏の甲子園でエースとして甲子園初出場に貢献。初戦が開幕戦となり、平成初の勝利投手、完封、本塁打を記録した。あれから30年。母校の監督して平成最終年を迎えた。前夜のミーティングでは「巡り合わせでこのチームは持っている人間の集まりだ。平成の最初勝って、平成最後の甲子園で100回大会。これを大切にして歴史に向かっていこう」と声をかけたという。

 選手に伝えたいことがある。「平成の最初で勝っているから、最後に出て勝ちたいですよ。あそこはいいところですし、出たらこれから先の人生で役に立ちますから」。高校卒業後は阪神に入団。引退後は用具メーカーなどで会社員を務めた。人間関係の形成、仕事への姿勢など…。あらゆることにその経験が生きたという。社会で活躍してほしい。監督としてOBとして選手を思いやった。甲子園へはあと4勝。選手思いの指揮官がタクトを振るう。【山川智之】

 ◆麦倉洋一(むぎくら・よういち)1971年(昭46)7月29日生まれ、栃木・都賀町(現栃木市)出身。佐野日大でエースとして89年夏に甲子園出場。同年ドラフト3位で阪神に入団し94年引退。会社員を経て17年に佐野日大の監督に就任。プロ通算12試合2勝4敗。現役時は178センチ、79キロ。右投げ右打ち。