甲子園連覇を目指す花咲徳栄(北埼玉)が、初戦から超高校級の打撃を見せた。桶川西投手陣も140キロ近い速球を投げ込んだが、打線の感想は総じて「速く見えない」。ことごとく引っ張り続け、10安打以外にも強烈な打球を放ち続けた。強力打線を1ランク上に引き上げたのは、横浜(南神奈川)の最速152キロ左腕・及川(およかわ)雅貴投手(2年)の存在だった。

 プロ注目の主砲・野村佑希外野手(3年)のタイミングはボール1~2個分、早かった。左翼ポール際から、さらに左に流れる大ファウル。「甘く来たので、つい早く動いてしまった」。その後の低めを右前に流し、3回の4連打5得点につなげ、初戦突破の流れを作った。

 140キロ前後の速球をものともしないスイングで、相手をのみ込んだ。岩井隆監督(48)は「あれが本当に大きかった」と振り返る。あれ、とは7月1日の横浜との練習試合。井上朋也右翼手(1年)が本塁打を放つなど、横浜の152キロ左腕・及川に対応した。ナインたちは「ちゃんと見えた」と及川の速さにあまり驚かなかった。

 その前日に及川対策をしていた。野村が「少年野球より短かった」と笑う、約10メートルから迫る打撃投手の球は「160キロに見えました。あんな速い球、見たことない」(野村)という衝撃。約1時間の特別練習で目を慣らした。5番・羽佐田光希三塁手(2年)は「体を動かして打つ、ではなく、芯を狙って勝手に体を反応させる」という速球対策を10メートル打撃で習得した。及川に三振せず、この日も2安打3打点の活躍だった。

 横浜との練習試合当日は「よし、行くぞ!」と岩井監督が珍しくバスのハンドルを握り、選手の士気を高めた。練習試合でさえも最大限の準備で挑み、大きな果実を得た。すべては甲子園に戻るため。「初戦の硬さもあった。(状態は)もっと上がると思います」と岩井監督。この夏も、長い旅路になりそうだ。【金子真仁】