<高校野球南神奈川大会:寒川11-4海洋科学>◇13日◇1回戦◇俣野公園横浜薬大スタジアム

 部員11人の海洋科学は、学校改編後の初白星にあと1歩届かなかった。1-1の5回1死、主将の関谷がバットを振り抜き二塁打。連打で三塁まで進むと暴投で生還し、勝ち越した。一時は2点をリードしたが、終盤の大量失点で8回コールド負け。「気のゆるみが出て流れを失ってしまった。もっと練習しておけば良かった」と振り返った。

 野球部で唯一、船舶運航コースに在籍。4月21日から6月18日まで大型実習船「湘南丸」に乗船し、マグロはえ縄漁業など遠洋航海の実習を受けていた。出航前「メンバーを集めてくれ」と仲間に託した。当時、部員は7、8人。大会に出られない危機に直面していた。実習中は海上のため情報が得られず、何も分からないまま。帰国する5日前、衛星を通じて送信された情報の中に、大会の組み合わせがあった。学校名を見つけ「大会に出られる。人数が集まったんだ」と胸が躍った。

 船上で筋トレはしていたが当然、野球からは離れていた。帰国後の練習では体が動かず「ボールが当たらないし、飛ばなかった」。居残りで自主トレを重ね、感覚を戻した。この日は、野球未経験で5月に入部した河野泰次郎三塁手(3年)をカバーするために、広い守備範囲を見せた。わずか1カ月間の11人のチームだったが、スタンドの吹奏楽部と生徒会の声援を受け、ホラ貝の音色にも、背中を押された。「やるときはやる、いい仲間が集まりました。悔いは残っていません」と汗をぬぐった。【保坂恭子】