<高校野球岡山大会:玉野光南10-0吉備高原学園>◇13日◇1回戦◇倉敷マスカットスタジアム

 野球ができることに感謝した。玉野光南(岡山)の主将・井上佑樹内野手(3年)は西日本豪雨の被害を受けて、避難を余儀なくされた。岡山・高梁市中井町にある自宅の裏山が、6日に土砂崩れを起こした。土砂は家の壁目前まで迫っていた。水の流れをよくするため、その土砂をかき分けていたが、母から「家はもういいから。命だけは」と言われ避難を決めた。町内の体育館に避難していると、中井町全体が避難区域になり、今度は親戚の家に身を寄せた。家へ続く唯一の道路は土砂崩れで一時通行止め。自宅に戻れたのは、避難から4日後だった。

 「もしかしたら道具が流されているかもしれない。自分がキャプテン。自分が出られなかったらどうしよう」。家に戻れない間は、不安ばかりが頭をよぎった。幸い土砂は家に流れ込まず、10日に練習に復帰。田野昌平監督(46)からは「野球ができることに感謝せえよ」と声を掛けられた。

 この日の吉備高原学園との初戦は2番三塁で出場し、2回に内野強襲の適時打で4点目を奪った。「あらためて、みんなと野球をやるのが楽しいと思いました」。感謝を胸に精いっぱいプレーする。【磯綾乃】