初優勝を狙う仙台三が、第2シードの古川学園を8-1の7回コールドで圧倒し、2年連続の4強入りを決めた。右横手投げのエース菅田碧(3年)が、抜群の安定感で7回2安打1失点で完投。春の県準Vを完璧に抑え込み、3度目の決勝進出、悲願の初甲子園も視界に捉えた。また古川工は3年ぶり、柴田は5年ぶり、仙台育英は4年連続で準決勝に進出した。

 菅田が、オンリーワンな球筋で右打者を幻惑した。横手投げから繰り出される「浮いて曲がる」というスライダーがさえ渡り、7人の右打者に許した安打は、連打を浴びた3回の1本のみ。高めに浮き上がるクセ球で、ミートポイントを微妙に狂わせた。7回を投げ、1失点を喫した3回を除き、打者3人で仕留める快投を演じた。

 5-1で迎えた7回に、主将で女房役の岩渕央卓捕手(3年)の2点適時打などでコールド勝ち。球数104球と準決勝に向け余力を残した菅田は、「強い気持ちを持って力強く投げることができた。味方が点を取ってくれたので、力まずに投げることができたのがよかった」と振り返った。

 ボールの出どころが背中からくるだけで右打者にとっては脅威だが、今大会はその持ち味を発揮できないでいた。4回戦を翌日に控えた23日の練習で佐藤純二監督(42)から投球フォームの崩れを指摘され、左足を踏み出す位置を右方向に微調整し、本来の球筋を取り戻した。オンリーワンな存在だけに投球フォームの参考例も少ない。相談役は近所に住む初老の男性だという。仙台商野球部OBで同じ横手投げだった師匠から「いち、にー、さんじゃなく、いち、にーの、さんでためをつくりなさい」との金言を実行。唯一無二の投球フォームに磨きを掛けてきた。

 帽子のひさしには「克」と記している。3試合しかない1回戦からの勝ち上がりで、悲願の初優勝まで2勝。「昨年はベスト4で負けてしまったが絶対勝つ」。漢字の意味通りに、オンリーワンな球筋の菅田が力を尽くして事を成し遂げる。【下田雄一】