第100回全国高校野球選手権大会で史上初となる2度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭(北大阪)が、今秋ドラフト1位候補の根尾昂内野手、藤原恭大外野手(ともに3年)のアベック弾で沖学園(南福岡)を振り切った。「二刀流」根尾は夏の甲子園初登板となったマウンドで初の1試合2本塁打も食らったが、打ってはバックスクリーンに弾丸ライナーで飛び込む甲子園初アーチ。大観衆で埋まった聖地を魅了した。3回戦は高岡商(富山)と対戦する。

 聖地で初めての1発は、聖地の度肝を抜く弾道だった。7回、根尾が初球を振り抜くと、打球はバックスクリーン目がけてライナーで一直線。「やっと自分のスイングができたかな。いい打球だったと思います」。高校通算28号は推定120メートルの豪快弾となった。

 2年連続でセンバツ優勝投手となったが、夏の甲子園のマウンドはこの日が初めて。自身最速タイの148キロを計測したが、苦しい投球が続いた。2回に暴投から先制を許し、6回まで沖学園に食い下がられた。5回と8回には初めて、1試合2本塁打を浴びた。「早くストライクが欲しいと思って、投げ急いでしまった。相手チームの応援もあって、圧に急がされました」と、夏独特の雰囲気にのみ込まれそうになった。

 それでもバッターボックスでは自分を見失わなかった。「ピッチャーをするときも、ピッチャーだけに集中したら駄目だと思っていた」。3-3の6回に4点の援護を受けると、7回に自らの本塁打で1点追加。8回には4番藤原の2ランも飛び出し、甲子園初のアベック本塁打。8回8安打4失点でマウンドを降りたが、チームを勝利へ導いた。

 北大阪大会が始まる直前、ある本を手に取った。「リーダーの禅語」。スティーブ・ジョブズら世界のリーダーたちが学んだ「禅」について書かれたもの。野球とは一見遠いものに見えるが「刺激がほしくて」と読みこんだ。リーダーとしての組織やチームのまとめ方を学んだ。

 根尾は多いときで2カ月で20冊を読むほどの読書家。遠征先には本を持参するが、今大会の宿舎には「そんな時間はないです」と1冊も持ち込まなかった。最後の夏は全身全霊を野球にかける。

 今日の投打の点数を聞かれると「どっちも50点くらいです」。まだまだ本領は発揮していない。最高の夏はこれからだ。【磯綾乃】