大船渡が黒沢尻北を4-1で破り、16年ぶりの4強に進出した。最速157キロ右腕の佐々木朗希(2年)が中1日で先発。9回3安打15奪三振1失点(自責0)に抑え、3戦連続で完投した。東北大会出場に王手をかけ、83年以来2度目の秋優勝を狙う。35年前はその後の東北大会でも優勝し、翌84年のセンバツでは初出場で4強進出。「大船渡旋風」を巻き起こした。今度は「朗希旋風」で岩手を制し、一気に東北の頂点まで駆け上がる。

最後は142キロ直球で締めた。15個の三振を奪っても佐々木は笑顔1つ見せず、相棒の及川恵介捕手(2年)とグラブを外した左手でタッチした。ここがゴールじゃない。優勝を見据えている189センチの長身右腕は試合後も、鉄仮面を貫いた。

佐々木 中1日で疲れはあったけど、コースには投げられていた。思ったよりもいい球がいったし、変化球もよく曲がっていた。

連日の奪三振ショーだった。3戦合計で39個の三振を積み上げた。1点先制直後の3回表途中からは「味方が点を取ってくれた。流れを渡したくなかった」とギアを上げ、圧巻の7者連続三振。死球と安打で走者を許した7回はさらにギアを踏み込み、この日最速の154キロをたたき出した。「スピード表示で相手にプレッシャーをかけられる」。満員のスタンドを1球ごとに沸かせ、球場ごと試合を支配した。

今夏の岩手大会3回戦敗退後は、万全の時間を過ごしていた。早実(西東京)との練習試合に始まり、8月初旬には関西遠征で武者修行。夏からはプロテインの摂取も始めた。観戦に訪れた母陽子さん(45)によると「ミルキー味、キャラメルコーヒー味、メロン味が好きみたいです」。体重が減りやすい夏場でも、81キロの体重を維持することに成功した。

末恐ろしい男だ。今夏に猛威を振るった必殺フォークをあえて封印。スライダーとチェンジアップのみで秋は臨んでいる。「肘に負担がかかるし、使わなくても十分抑えられる」。22日の準決勝は盛岡大付と激突する。強豪私学からの誘いを断って大船渡に進学した佐々木にとっては、最高の相手だ。「ここまで来たら一戦必勝。いろいろな人の期待を背負って投げたい」。岩手も東北も通過点。甲子園という名の大海原が、佐々木を待っている。【高橋洋平】