札幌大谷が延長10回の末、昨秋覇者の駒大苫小牧に7-6で競り勝ち、5年ぶりの決勝進出を決めた。序盤で最大4点差をつけられたが追い上げ、同点の延長10回2死一、三塁で8番佐野翔騎郎(しょうきろう)右翼手(1年)が勝ち越しの中前適時打を放った。7日に予定されていた決勝は台風の影響を考慮され、明日8日に順延となった。

大声援が耳に響いた。札幌大谷の1年生佐野は、ベンチに向かい右手で力強くガッツポーズをつくった。同点の延長10回2死一、三塁。狙いすました変化球をフルスイングすると、鋭い打球が中前ではずんだ。5年ぶりの決勝に導く勝ち越し打に「頼むから抜けてくれと走ってました。すごくうれしい」と会心の笑みだった。

家族の支えで不振から立ち直った。全道大会2戦は先発出場したが計4打数無安打。どちらも代打を送られた。準々決勝・白樺学園戦後は自宅で父朋大さん(43)と「秘密のトレーニングをしました」。リビング横にスペースを作り、羽根打ちでミートポイントを確認した。「小さい頃はよくやったけど久しぶりだった」と朋大さん。原点回帰でこの日は決勝打含め4安打と復調した。船尾隆広監督(47)は「期待してない意外性のあるヒットだけど普段の練習姿勢が出た」とうなずいた。

先輩のためにも負けられなかった。2回裏、いきなり4失点。その直後の3回表1死一、三塁では1番北本壮一朗遊撃手(2年)がヘッドスライディングで左肩を脱臼した。「抜けたら大きいので全員で頑張ろうと思った」と佐野。全員でベンチを盛り上げ、あきらめないムードを作ったことが、昨年王者からの4点差逆転劇につながった。

翔騎郎という名前の由来は両親が好きな漫画のキャラクター。本家と読み方は同じ、漢字は異なるが「常に1番になって欲しい」(朋大さん)という願いが込められている。チームは創部10年目。16年春に全道優勝しているが、甲子園につながる夏秋の制覇はない。佐野はナインの思いを代表し「目の前の試合に集中して自分たちで決めたい」と力を込めた。頂点まであと1勝だ。【西塚祐司】