最速153キロ左腕、横浜・及川雅貴投手(2年)は、高校2年間で何本の本塁打を浴びたのだろう。「…7本ですね。全部失投です」と記憶をたどり、苦笑いした。うち6本が直球だという。マシン性能の向上で、各校の速球対策は進化している。

だからこそ及川の代名詞は、時に135キロに及ぶというスライダーなのかもしれない。ライバル・東海大相模の門馬敬治監督(49)も「あれは難しい」と悩む。「130キロ以上の変化球は、最近の神奈川では松坂、松井、好調な時のうちの吉田くらいでは」。横浜・松坂大輔(現中日)桐光学園・松井裕樹(現楽天)東海大相模・吉田凌(現オリックス)…甲子園で大活躍した好投手たちを挙げ、及川をたたえる。

全国の高校球児がうらやむ強烈な数字を示しながらも、及川は「自分は未完成です」と真顔になる。トップの位置を作るのが遅い、引っかけやすい、肩やひじの体力が足りない、連投でのずれの修正が遅い…と自己分析の言葉を続ける。この冬、自覚する課題の改善にひたむきに取り組む。

カットボールやチェンジアップには、まだ興味がない。持ち球は直球とスライダーの2つだけ。それでも「しっかり投げられれば、簡単には打たれない自信はあります」と言い切る。対外試合解禁は今年3月8日。どこまで進化するのか、期待は尽きない。最後に打撃について聞いた。「いや、あの、中学時代はすごかったんですよ。高校では…あ、この前レフトフェンス直撃を打ちました」と人懐こく笑った。【金子真仁】

◆及川雅貴(およかわ・まさき)2001年(平13)4月18日、九十九里浜に面した千葉・匝瑳市生まれ。須賀スポーツ少年団で野球を始め、八日市場二中では匝瑳シニアでプレー。侍ジャパンU15代表に選ばれた当時から、最速140キロをマークしていた。遠投110メートル。50メートル走は6秒0。183センチ、74キロ。左投げ左打ち。