3年ぶり出場の古豪、市和歌山が「料理男子」の2年生エース左腕、岩本真之介投手の力投で、開幕戦を劇的なサヨナラで飾った。2-2で迎えた延長11回裏、2死二塁で8番打者、片上柊也(かたがみ・しゅうや)外野手(3年)が中前適時打。ネクストバッターズサークルにいた背番号1も小躍りして喜んだ。

岩本は7回2死まで、4四死球と失策で走者を出したが安打は許さなかった。「ちょっとノーヒットノーランが頭をよぎりましたが、打たれた後は気持ちは切り替えました。打たれた(初安打)後からの方が自分としてはいい投球だった」と自分をほめた。

入学後、学校まで約1時間かけて実家から通学していたが「朝早いし疲れる」と、昨年秋ごろに学校まで自転車で約3分ほどの下宿に引っ越して、1人暮らしを始めた。朝と晩は基本、自分で料理。間食に自分でつくったおにぎりを多いときで1日10個を食べ、体重を4キロ弱増やした。親子丼、カツ丼、ハンバーグもつくり、おかずの余りをおにぎりにつめて体力をつけ、134球完投勝利。センバツの大舞台でも相手打線をうまく「料理」した。

センバツの和歌山県勢通算100勝を智弁和歌山より先に勝ち取った。「もう雰囲気が分かったので、次は完璧な投球をしたいです」。1年前は中学3年生だったあどけなさが残る岩本が、お立ち台で胸を張った。【浦田由紀夫】