時代をまたいだ10連休中、都内で高校野球の新たな試みが始まった。国立の5校によるリーグが結成されたのだ。

2日、世田谷の東京学芸大学付属高等学校(東学大付)グラウンド。筑波大学付属高等学校(筑波大付)、東京学芸大学付属国際中等教育学校(東学大国際中教校)との3校による、総当たりの第1試合が始まった。審判員が「東京学芸大付属と筑波大付属の練習試合を行います」と言うと「練習試合じゃないよ。国立リーグだから!」と声が飛んだ。

3校とも国立高校で、筑波大学付属駒場高等学校(筑波大駒場)と東京工業高等専門学校(東京高専)の2校も加わり、リーグが立ち上がった。

昨年末。5校の監督、顧問らが集まり「国立リーグ構想」が練られた。春と秋の年2回、総当たりで4試合ずつ戦う。公式戦同様にコールドルールを採用。高野連の公式審判員に頼む。順位をつけ、優勝校を表彰するなどなど…公式戦さながらのフレームを組んだ。音頭を取った東学大国際中教校の池田正嗣監督(50)は「国立は、どこも制約がある。普通にやっても勝てない。結集した方がいい」と説明した。

屈指の進学校が並ぶ。週末は塾を優先する選手もいる。部員数が限られる。週3日しか部活動ができなかったり、校庭が狭かったりもする。合同練習や懇親会も開き、情報を共有しながら切磋琢磨(せっさたくま)し、力を蓄える。当面の目標は、全5校の公式戦初戦突破だ。今春都大会では東学大付が予選1回戦を勝っただけで、他の4校は初戦コールド負け。現状では、高い目標かもしれない。

選手たちの意識が気になる。甲子園を目指してるの? 「無理と分かってます」「無縁です」。冷静に返された。が、決して冷めた答えではない。東学大付の青島秀多主将(3年)は「夏前に大会形式で戦える」と歓迎し、続けた。「実力を考えると、私立の上に行くのは現実的ではありません。でも、1つ1つ勝っていく。少しでも長く、高校で野球を続けたいので」。

青島主将は、こうも言った。「人って熱中できることは、あまりない。僕は小、中、高と野球に熱中してます。人生において良いこと。野球は難しい。どんなに練習しても上がいる。だから面白いんです」。

私立や強豪都立との差は否めない。だが、1勝のために戦うのは同じだ。記者は東大野球部も取材している。東京6大学で断然最下位だが、真剣な彼らを知っている。ネットでは「6大から外せ」と心ないコメントを目にする。中島みゆきの名曲「ファイト!」の歌詞をお返ししたい。

「ファイト! 闘う君の唄を 闘わない奴等が笑うだろう」

【古川真弥】