さぁ、大船渡旋風だ! 第101回全国高校野球選手権岩手大会(7月11日開幕)の組み合わせ抽選会が26日に行われ、最速163キロ右腕・佐々木朗希投手(3年)を擁する大船渡の初戦(2回戦)の相手は、遠野緑峰に決まった。

全国区の盛岡大付、花巻東とは大会終盤まで対戦の可能性がない。令和の怪物がジャイアント・キリングで甲子園へ進む道筋が見えてきた。

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誰もが予感した。抽選終了まで残り19校の時点で盛岡大付、専大北上、一関学院の強豪勢の初戦相手がまだ決まっていない。もしかして、大船渡はそこに入っちゃうのか-。

千葉宗幸主将(3年)が選んだクジは59番。相手が遠野緑峰に決定すると、会場の空気が少し緩んだ。かけられた「大船渡」の札から、盛岡大付、花巻東の札は遠い。千葉主将は「盛岡大付さんなどとは離れましたし、先を見ずに1つ1つ自分たちの力を出していきたい」と言葉を選んだ。

道筋は定まった。難関2強は離れるも、4回戦以降は5日間で4勝が求められる過密日程。ベンチ入り予定は5投手で、佐々木の連投はもちろん、佐々木以外の登板も濃厚だ。それでも国保陽平監督(32)は「ヤマ場? 初戦です」と即答。昨秋、今春と地区予選敗退の遠野緑峰が相手とはいえ、最後の夏に照準を合わせ鍛えてきたエース投入を決断する可能性もある。

大船渡は弱くない。3月下旬には併殺に苦戦した内野陣も、最近は動きがスムーズだ。高校通算30本塁打に迫る木下大洋外野手(3年)が主軸の打線も県内上位。控え選手たちも1発の力を秘める。昨夏、2ランスクイズで勝利をもぎとった金足農(秋田)のように試合ごとに強くなり、見る者をワクワクさせる「何か」を秘めている。

全国をにぎわす東北旋風は、100回大会の日本海側から三陸へと移るか。35年ぶり甲子園を願う港町では、甲子園の応援費用捻出に早朝の新聞配達を始めた人もいる。千葉主将は「朗希もそうだし、たくさんの期待に応えられる大会にしたい」と太い眉に強い決意を込めた。【金子真仁】

◆大船渡の各校対戦成績 対戦の可能性が高い相手校との、新チームでの公式戦対戦経験は、一戸と盛岡大付だけ。昨秋の県大会2回戦では一戸相手に佐々木が先発完投し、7回5安打13奪三振1失点。11-1で7回コールド勝ち。盛岡大付との同準決勝でも先発完投して9回10安打10奪三振7失点で5-7と敗戦。今春の練習試合では遠野緑峰にダブルヘッダーで連勝。宮古とは3-8、12-8の1勝1敗。花巻東とは大船渡一中の3年時にオープンスクールに参加した縁がある。

▽花巻東・中村勇真主将(3年=春の県王者で連覇を狙う)「佐々木朗希くんはすごいですが、花巻東は夏の連覇が1度もないので、一戦一戦全力で戦い抜くだけ」

▽盛岡大付・及川温大主将(3年=ロウキ君と名付けた最速175キロのマシン打撃を繰り返し、昨秋の準決勝では佐々木から7得点勝利)「全国で一番いい投手だし、プロにいく投手。スピードには目が慣れている。打ってモリフの存在を示したい」

▽遠野緑峰・菊池虎太郎主将(3年=初戦での対戦が決まり)「朗希くんがいつ出てきてもいいように速い球を打つ練習をしたい。新チームになって公式戦では1回も勝っていないけれど、自分たちが大船渡に勝てれば有名になれると思う」

▽宮古・佐々木開成主将(3年=3回戦で対戦の可能性)「朗希とは中学のKボール選抜で一緒で、4月の練習試合でも『夏にやれたらいいな』と話していたので、近くに来てびっくり。必ず初戦を勝って実現させたい。相手がドラフト候補でも、タイミングさえ合えば必ず打てる」

▽盛岡四・畠山航輔主将(3年=4回戦で対戦の可能性)「もし佐々木君と対戦できたら貴重な経験。期待半分、不安半分。県大会や東北大会で、速い球には割と慣れている。楽しんでいきたい」