昨夏のエースが帰ってきた。拓大第一の斎藤陽太投手(3年)が、聖パウロ学園を6回5安打3失点に抑えた。

2回まで聖パウロ学園打線を無安打に抑えたが、3回に連打を浴びて2失点。6回にも1点を失った。しかし、昨夏に1番を背負いマウンドに立った左腕は動じなかった。松井貴寛監督(29)が「バッター心理を考えて、頭を使ったピッチングができる」と評価するように、工夫を凝らした。本来はためが長いフォームだが、走者がいなくてもクイックを織り交ぜるなどし、相手打者のタイミングを外した。

空白の時間を無駄にしなかった。昨冬、左肘を故障し、治りかけたこの春に肺気胸をわずらった。異変を感じ、すぐに病院に行ったところ「今日野球をやっていたらもっと大変なことになっていたよ」と言われるほどの重傷だった。1カ月間はまったく運動ができなかったが、ひたすら練習を眺め、野球を学んだ。

5月下旬に実戦復帰し「球威は戻ってきたが、体力に不安がある」とまだ発展途上。今年の夏は安西航輝投手(3年)が1番を背負い、自身は10番。松井監督に「番号を決められないから、2人で相談してくれ」と言われ、10番を選んだ。「まずは神宮に行くことが目標。1つずつ勝っていきたい」と謙虚に語る。”頭脳派”投手が今夏もチームを引っ張る。【飯岡大暉】