主将で、エースで、5番打者。頼れる男、小仲井大樹投手(3年)の活躍で、横須賀工が3回戦進出を決めた。

167センチ、93キロの小仲井には、この夏、ひときわ頑張らなくてはいけない訳があった。昨年、母の恵津子さんが乳がんのため亡くなった。49歳の若さだった。「最後の夏の大会で頑張っているところを、見てほしかったんです…。でも、うん、見せられたかな」と言った。

胸を張っていい働きだった。先発したマウンドでは初回、制球を乱して先攻を許したが2回以降、立ち直り、6回まで無失点に抑えた。「立ち上がりはいつも不安なんです。7回に連打されたのは、抑えてやろうと逆に力みすぎました」。

主将、5番打者としてもチームを引っ張った。6点を挙げた6回は、中越えの二塁打でビッグイニングに尽力した。ピンチの時、力が欲しい時、小仲井はズボンの左ポケットを触る。そこには、恵津子さんの遺骨を収めたシルバーのケースがあった。

「母の作ってくれた、から揚げが懐かしいです。ピンチでいつも助けてくれた」。

三木健太郎監督(35)は、土、日の練習前、動きや勝負勘を養うために別の競技に取り組ませているが、小仲井はその中でも「サッカーの動きを体にしみこませた成果が出たと思う」と言った。「シード校を破ってベスト16に入るのが目標です」。母とともに戦う夏は、まだ終わる訳にいかない。【玉置肇】