<高校野球栃木大会:上三川6-5茂木>◇16日◇1回戦◇栃木県総合運動公園野球場

「お願い…」。茂木(栃木)の渡辺夢豊(めもり)マネジャーは胸の前で手を組み、何度も願った。願いは届かず、9回に2点のリードを守れず逆転サヨナラ負け。こらえていた涙があふれ出た。

「2年半の集大成。サポート役なので大したことはできないけど、勝ちたかった。つらかったことよりも、楽しかったことの方が多い。思い出というより、かけがえのないモノになった」

父純芳さんが「夢が豊かになるように、自由に生きて欲しい」と名付けた。「私しかいないから」と誇りにする名前だ。そんな彼女の夢は「アフリカで井戸を掘って、水をくめるようにするボランティアがしたい」。小学生の時に「人のために何かをしたい。自分は二の次」と決めた。その言葉通り、野球部でもナインのために多くの時間を費やしてきた。

「基本的にネガティブ。でも夢の話だけはポジティブにできるんです」。夢を語るその目から涙は消え、いつしか晴れやかな笑顔に変わっていた。「3年間の野球部人生で、たくさんのことを学ばさせてもらった。この経験を将来の夢につなげて、自分らしく生きていきたいです」。今日までの“メモリー”を大切に胸にしまい、自分の夢に突き進む。【佐藤勝亮】