91年センバツで旋風を起こした「ミラクル市川」は、やはり何かをもっている。断続的な雨と、長い中断を乗り越えて、10ー9で逃げ切った。

1点を先制された初回の攻撃で、相手投手の制球難と中軸の連打で一気に4点を奪い、あっという間に逆転した。しかし、15日の甲府一戦で完封した下手投げの村松智之投手(3年)が、軟弱なマウンドと雨で指先が滑り、本来の投球ができない。最速115キロとの真っすぐと83キロのカーブで緩急をつける持ち味が正確さを欠き、痛打された。

9-3で迎えた7回には死球をはさみ4連打を浴び、4失点。2点差まで詰め寄られ、ついに降板となった。「相手は必ず終盤に巻き返してくるチーム。そこは分かっていたけど、自分の甘さが出た」と村松。

来春に増穂商、峡南と統合されるため、単独チームとしての出場は今年が最後。しかも市川の校名も変わる可能性があるだけに「1試合でも長く『市川』のユニホームでやりたい」。

佐野大輔監督(37)は「雨の試合で、グラウンドが軟弱ななかでも送りバントで1点を取りにいく姿勢がリードにつながった」と、選手の成長を指摘した。準々決勝は東海大甲府戦。「我々には失うものが何もないから。思い切ってぶつかるだけす」。「ミラクル市川」の伝統が続くのか、歴史として残るのか。興味深い一戦となる。