阪神矢野監督の母校、桜宮(大阪)が「矢野ガッツ」ばりのガッツポーズで逆転勝ちした。阪神とは違い、気持ちを切り替えるためミスのあとにあえてガッツポーズ。異色の取り組みが効いて、大院大高を撃破した。

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場違いなガッツポーズが逆転への出発点だった。1-2の5回2死一、三塁の守り。一塁走者に盗塁を仕掛けられた桜宮・大本澄也捕手(3年)は二塁に悪送球…。2点差とされる痛いプレーだった。

意気消沈の大本はなぜか「おっしゃー!」と叫んで応援席にこぶしを向けた。ベンチ外部員からも「おっしゃー」とお返し。これこそが桜宮が3カ月間取り組んできた作戦だった。

就任5年目の北風和樹監督(58)が5月に発案。「ミスの連鎖を防ぐために始めました。矢野監督とは違う形だけど、共通していますね」。選手とガッツポーズで喜び合うことで話題になった阪神の「矢野ガッツ」とは違い、守備でミスした時にだけ実行する。

なかなか浸透しなかったが大会直前の練習試合で負け「学校に帰って『練習』するぞ。これだけはやり切ろう」と監督が大号令。ガッツポーズだけの練習を1時間も繰り返した。

「最初は抵抗があったけど、監督を信じて全員でやりました。切り替えて終盤にいい雰囲気でいけました」と大本。7回に1点、8回に2点で逆転した。

「粘る野球」が身上の同監督は3イニング×3の意識で戦う。最も重視するのが終盤7~9回で「ここは必ず勝っておけ」と練習試合で徹底。この日は「3-0」で勝ってみせた。

公立の強豪だが82年春が唯一の甲子園出場で、矢野監督も届かなかった。大本は「優勝が目標です」ときっぱり。前日は校歌を歌い、客席に向けて走るシーンを想像した。笑顔満開の桜宮ナインは、矢野監督ばりの“喜び”のガッツポーズを応援席に送った。【柏原誠】